細部に魂が宿ったデザインBMW 5シリーズがセダンに続き、ツーリングもモデルチェンジを果たした。540i xDrive ツーリング Mスポーツに早速試乗。xDrive(4WD)で、ツーリング(ステーションワゴン)で、Mスポーツ(スポーティーな仕立て)と、チャーシューも煮玉子もメンマも刻みネギも入った全部載せモデルで、価格は4桁の1069万円に達する。ラーメンなら1000円超えのこの最上級5シリーズを、短時間ながら首都高と一般道で走らせた。 新しいツーリングはセダンがそうであったように、先代と比べガラリと印象が変わったわけではなくキープコンセプトといえる。とはいえヘッドランプにLEDを仕込むなど、ところどころに現代的な要素を巧妙に盛り込むことで、全体としては誰が見ても新しい5だと感じるスタイリングになっている。水平基調の伸びやかなプロファイルに角度の異なるキャラクターラインを2本入れることで陰影がつき単調になるのを防いでいる。奇をてらってはいないが、細部に魂が宿ったデザインだと思う。 かつてドイツ車は、ドアを開けるときにずしりと重みを感じたものだが、BMWにかぎらず最近のはどれも軽い。まぁ別にあの重厚さが懐かしいというわけでもない。運転席からの見た目もおなじみのBMWワールド。インストルメントパネルはディスプレイ(地図画面が非常に高精度になった)も操作系も横長で、ドライバーが視認・操作しやすいよう少しドライバー寄りに角度がついている。 日常領域でも“いいモノ感”が伝わってくる直6ターボ車名の3桁数字の下ふた桁が排気量を示さなくなって久しいが、540iもそうで、3リッター直6ターボエンジンを積む。モジュラー・コンセプトに基づくエンジンで、1気筒当たり499.5ccのシリンダーを4本並べたのが、523iや530iの4気筒で、6本並べたのが540iの6気筒。最高出力340ps/5500rpm、最大トルク450Nm/1380-5200rpmというスペックの通り文句なく力強い。ハイパワーエンジンきっての上品エンジンだ。 “低回転域からまったく淀みなくスムーズに回転する”というのは自分自身で書き飽きたフレーズだが、これ以外に表現を思いつかない。どこかでトルクが爆発的に立ち上がるタイプではなく、大排気量の自然吸気エンジンのように全域で分厚いトルクを発するタイプ。 ハイパフォーマンスエンジンのなかには飛ばさないと魅力が伝わってこないものもあるが、この直6ターボは上まで回さず、日常的な領域でも”いいモノ感”がひしひし伝わってきて満足感がある。BMWが6気筒をラインナップし続ける限り、予算が許すなら6気筒を選ぶべし。4気筒にするなら530iじゃなく523iでも別にかまわないと思う。4気筒なら523dを積極的に薦めたい。 勝手にドライバーの意をくんで最適な動きにフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクというエンジン縦置き高級車の定番のサスペンション形式を採用する。ATセレクターレバー脇にあるドライビング・パフォーマンス・コントロール・スイッチによって「コンフォート」「スポーツ」「エコプロ」のなかからひとつ選べば、アクセルやステアリング特性、シフトポイント、ダンパーの特性が名称通りに変化する。これを選ぶのさえ面倒だという人のために「アダプティブ」モードがあって、それまでの走行から判断して総合的に最適な特性を設定してくれる。 加えて、60km/h未満なら逆位相、60km/h以上なら同位相に後輪が操舵することで、小回り性能と高速域での安定したコーナリングを両立している。もちろん4WDシステムは前後トルク配分を常に最適化し続ける。荷物の量に応じて姿勢が変わってしまわぬよう、リアにセルフレベリング機能がついたエアサスが備わる。 たくさんありすぎて最後のほうが箇条書きみたいになってしまったが、これらすべてはクルマが勝手にドライバーの意をくんで最適な動きをしてくれる。ドライバーは知らずに乗って「やっぱりBMWは高いだけあってハンドリングも乗り心地もいいね」と言っていればよい仕組み。一般道では「コンフォート」を選んでおけばひたすら快適に走らせることができる。 運転支援システムもトップレベル先進的な運転支援システムもトップレベルだ。衝突被害軽減ブレーキは歩行者にも対応する。ACCは全車速対応で、高速走行時には車線中央を維持すべくステアリングアシストが作動する。渋滞時には車両がアクセルおよびブレーキ操作、それにステアリング操作を統合的にアシストしながら先行車を追従するため、ドライバーはステアリングホイールに軽く手を添えているだけでよい。 真横から車両が接近してきたらそれを避ける動きが自動的に入るし、後続車が速いペースで接近してきたらハザードランプが点滅して注意を促すほか、衝突が避けられないと判断したらシートベルトがタイトに締まり、ウインドウとサンルーフが閉じて乗員を保護する。ただしライバルのメルセデス・ベンツEクラスに備わるレーン・チェンジ・アシストは本国仕様には備わるものの、日本仕様には採用されない。 540iの直6ターボだったら後悔しないところで、これまでBMWのウインカーレバーは、右左折時に上げても下げてもレバーが元に戻っていたが、新型ではこのうちウインカーレバーが変更され、他の多くのクルマ同様、上げれば上がったまま、下げれば下がったままのタイプになった。半年前、セダンの試乗時にどうして気づかなかったのだろうか。ともあれこれは福音だ。元に戻るとどうも使いづらい。BMWオーナーはどう考えるだろうか。ちなみにレクサスもBMWに追従して元に戻るレバーを採用するが、BMWはイチ抜けた格好だ。 同様にATセレクターレバーも親指でスイッチを押しながら手前へ引いてDに入れても奥へ押してRに入れてもレバー自体は元のポジションに戻るが、こちらは従来通り。メーター内などに表示が出るとはいえ、D、N、Rのうちどの状態にあるかが手元でも一目瞭然であってほしい。DやRにきちんと入っても、操作が不十分でNのままでも、レバーが同じ位置だと直感的操作を妨げると思う。ただZF社製のATを使う複数のブランドがこのタイプを採用するため、BMWだけがやめたいと考えても簡単ではないのかもしれない。 ボルボ・カーズが2019年以降はIC(内燃機関)のみのクルマは売らないと宣言したり、フランスが2040年までにICの販売をやめる方針を打ち出したりと、乗用車の電動化の波が一気に加速し始めた。あなたが何年ごとにクルマを買い換えるか知らないが、新車を買う人なら次か、次の次に買うのはHVかPHVかEVである可能性が高い。純粋なICの最後に何を選ぶか。540iの直6ターボだったら後悔しないと断言し、自信をもってオススメしたい。 スペック【 540i xDrive ツーリング Mスポーツ 】 |
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