今後「GRヤリス」それぞれの呼称は「~式」昨年1月に「進化型」と銘打ち大幅なアップデートを行った「GRヤリス」。そして間を置かずに今回「TOYOTA Gazoo Racing(トヨタ ガズー レーシング、以下TGR)」は、その進化型GRヤリスにさらなる改良を施してきた。 となると進化型の進化型だから、新進化型? 呼び方はどうなるの? ということで今回からTGRは、改良年モデルを年式で区別することになった。 その規則に照らし合わせると、初代モデルは「20式」(2020年に登場)、進化型と呼ばれたモデルは「24式」となり、今回試乗するモデルは「25式」のGRヤリスとなる。 そんな25式GRヤリスの変更点は、大きく分けて6つ。24式でもかなりのアップデートだっただけに、まだ手を付けるところがあるのかと驚いたが、その内容を見ていくと確かに24式があってこその改良であることがよくわかった。 #改良型GRヤリス #GRヤリスマイナーチェンジ #25式 #GRヤリス #GRヤリス改良 エアロ仕様の追加と地味だけど効く改良の数々25式で最も大きなアップデートは、「エアロパフォーマンスパッケージ」の追加だ。 その狙いはまず24式でも重要視された熱対策で、アルミ製のボンネットにはエンジンからの熱を排出する大型ダクトが設けられた。 ダウンフォースを高める手段としてはフロントにリップスポイラー、フロントフェンダーにはタイヤハウス内の乱流を走行風で引き抜くダクトが加わった。 またリアバンパーにもダクトを追加することで、バンパー内に溜まる空気を排出。俗にいう“パラシュート効果”を抑制して、ストレートスピードの低下を防いだ。そして最後は大物の可変式リアウイングだ。 シャシー面では、3箇所の「ボルト」が改良された。1つ目はフロントロアアームとロアボールジョイントをつなぐボルトで、フランジ部にリブを追加。 2つ目はリアサスペンションメンバーとボディを締結するボルトの頭部サイズを拡幅。3つ目はリアショックアブソーバーとボディを連結するボルトで、フランジの厚みが増やされた。 24式で高められたボディ剛性に対して、足まわりの締結剛性を高めるボルトを追加する。より素直に動くようになった足まわりはダンパーの減衰設定がさらに合わせ込まれ、ハンドリングの味付けを決めるEPS(電動パワステ)の制御も変更された。 「20式」こと初代モデルが意外にいい?興味深いのは24式で登場したばかりの8速AT「GR-DAT」(Gazoo Racing ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)が早々に、しかも30項目以上の改善を実施したこと。 また、GR-DAT車のフットレスト幅を広げ、サイドターンしやすくなる縦引きパーキングブレーキを全グレードで選択可能に。 さらに、GR-DAT用機械式LSDや、耐久レースでバンパーの脱着が素早く行えるバンパーボルトをメーカー/ディーラーオプションとしてラインナップした。 こうした盛り沢山なアップデートだけに、試乗内容もかなり中身が濃かった。 比較車両はまず最初に20式6MTに試乗して、そのあと25式6MTと8速GR-DAT、そしてエアロパフォーマンスパッケージ装着車を乗り継いだ。 直接進化を比べるなら24式の方ではないか? そう思いながら乗り込んだ20式だったが、意外なことにこれがかなりいい。 20式のパワースペックは272PS/370Nmで、24式になった際に「GRカローラ」と同じ304PS/400Nmへとパワーアップが施されている。 そのローパワー仕様(?)とアップデート前のシャシーが、テストコースに選ばれた袖ケ浦フォレストレースウェイでなかなかのマッチングを見せたのだ。 具体的には、足まわりがソフトな分、コーナーの進入で素直にノーズがインに向いてくれる。スタビリティという点では確かにロールスピードが早くて高速コーナーはスリリングな一面もあるが、パワーに対してはマッチングが良いため動きが軽い。 20式は4WDの前後トルク制御が「スポーツ」モードでは30:70、トラックモードだと50:50という配分で、個人的にはソリッドな挙動を示すトラックモードが好みだった。 余裕ある走りに進化した6MT。ただし課題も見えた対して、25式の6MTはどっしりとした安定感が何より特徴的だ。かつて24式でこのコースを走ったときは、32PS/30Nm上がったパワーにシャシーだけでなくドライバー(つまり筆者だ)までもが対応しきれないヤンチャな印象だったが、25式ではそのスピードを余裕を持って扱うことができる。 特に感心したのはフルブレーキング時の安定性で、制動力はもちろんペダルタッチも頼もしい。ABSの効き方はとてもマイルドで、リアサスペンションがきちんと接地しているのを感じ取れる。 また、高速コーナーでは、明らかにアクセルを戻す量が少なくなった。 アプローチでのロール量が少ないだけでなく、アクセル操作に対してピッチングが抑えられているから、限界がとても探りやすいのも素晴らしい。 ただし、トレードオフもある。思い切り攻められるようになった分だけ、タイヤの限界までもが見え始めてきた。 特に、袖ケ浦フォレストレースウェイの下りながらの4コーナーや、最終セクションの低速なヘアピンでは、ブレーキングで攻められる分だけフロントに荷重が一気に乗りすぎて、タイヤが路面に追従しきれずジャダー(振動)を起こしてしまう。 タイヤの剛性は十分あるが、むしろ接地が抜けないように、もう少ししなやかでもいいくらいに感じた。 対して車両側では、カーボンルーフとはいえ、ヤリスの高い重心の移動を足まわりが抑えきれていない印象だ。もしサスペンションに調整機能があったら、もう少しだけフロントキャンバーを増やすか、伸び側の減衰力を高めてみたいと思った。 マニュアル派も唸るATの進化。6MTと究極の二択に8速ATであるGR-DATの進化には、目を見張るものがあった。特によかったのは、マニュアルモード時の制御だ。 24式では、エンジン保護のために一回でもレブリミットに当たるとその出力が絞られていた。しかし25式ではスポーツモードに入れると3秒間、レブを当てたまま耐えてくれるようになったのだ。 この制御のおかげで、まずパドル式シフトの操作遅れに対するタイムロスが減った。またラリーでは「もう少しだけ引っ張りたい」場面で、シフトを固定することができるようになったという。 とはいえ、25式は前述の通りシャシー性能が上がったおかげで余裕をもってその速さに対応できるようになったため、以前ほどシフト操作に遅れを取らなくなったのだけれど。 さらに言えば、Dレンジ任せの走りも洗練された。登り坂ではアクセルを踏み続ける限りエンジンを使い切ってシフトアップしてくれるし、ブレーキングではターンインに集中していても素早くシフトダウンしてエンジンブレーキをかけてくれる。 となると、6MTと8速GR-DATでどちらを選ぶべきか、本当に答えが出せない。 この小さなボディを爆発的な加速で走らせるGRヤリスにとって、ガッチリとした手応えを持つ6MTのフィーリングは間違いなく乗り味の要となっている。とはいえ街中で常用するにはクラッチが重たく、そのつながりもシビアだ。 対してGR-DATは街中での融通が利くだけでなく、アマチュアレベルでは6MTより変速が速い。それだけでなく、シフトダウン時のオーバーレブを心配せずにブレーキングに集中することができる。 その実、どちらを選んでも街中では乗り心地はハードだから、高性能モデルを快適に運転したくてGR-DATを選ぶというよりは、性能的なプライオリティで選べばよいと思う。 生産体制の改善で納期は驚きの“2か月”に!いよいよ最後は「エアロパフォーマンスパッケージ」だ。もうこれは、走り出しから違いがわかった。 まず驚いたのは、タイヤのフィーリングが変わったことだ。まるでコンパウンドがワンランクソフトになったかのように、接地感が増した。 そしてクルマの動きも、さらに穏やかさを増した。特にリアウイングの効果は高いようで、わずかにアクセルを戻していた2コーナーが全開になり、下りながらの4コーナーでは、さらに奥までブレーキングを詰めていくことができた。 その際、リアの滑り出し方も穏やかで、ノーマルボディよりも積極的にこの姿勢変化を使ってターンして行けるようになったのだ。 開発ドライバーである大嶋和也選手いわく「当初は排熱ダクト付きフロントボンネットのドラッグが大きく、なおかつウイングによってダウンフォースがかなりリア寄りになって、ストレートスピードとフロントタイヤの接地性が犠牲になっていた」という。 そこで、最後の最後に“泣きの一手”でフロントバンパーにリップスポイラーを追加したわけだが、これが少なくとも袖ケ浦フォレストレースウェイと当日の路面コンディションには、すごくバランスしていた。 走れば走るほど、GRヤリスへの理解が深まっていく楽しさ。これこそが、スポーツドライビングの醍醐味だと思う。そしてこれを連続周回して試せるほど、GRヤリスは速くてタフなモデルへと進化した。 こんなスポーツモデルが500万円未満から、モータースポーツベース車両の「RC」であれば400万円未満から狙えるのは本当にすごいことだ。 「でも、人気で買えないんでしょう?」と思う人は、ホームページを覗いてみてほしい。その生産体制はきちんと整えられていて、現時点では(9月7日現在)納車も2ヶ月程度とアナウンスされているのだ。 (おわり) |
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