なぜ若者はスポーツカーに乗らなくなった？ お金、SUVやミニバン人気、価値観の多様化…現代っ子の“リアルな心情”とは ...

なぜ若者はスポーツカーに乗らなくなったのか？

1980〜90年代、ホンダ「NSX」、日産「シルビア」、トヨタ「スープラ」などのスポーツカーは若者にとって憧れの象徴でした。

これらのモデルは、「かっこいいクルマ＝スポーツカー」として、走行性能の高さやエクステリア以外にも、所有することで、ステータスを感じられたモデルです。

とくに、当時はスポーツカーの価格が今よりも手ごろに設定されており、「頑張れば購入できる」という存在でした。このため、若者たちは「いつかは乗りたい」という夢を抱き、スポーツカーに魅了されたのです。

一方で、現在では、若年層がクルマへの関心を失いつつあることについて、インターネット上で度々議論されています。

その中で、金銭的な理由も大きな要因として挙げられます。

実際に、ある20代前半の男性は「お金があればスポーツカーに乗りたいが、ガソリン代や車両維持費を考えると難しい」と話します。

高額な購入費用に加え、維持費や燃料代がスポーツカーの障壁となり、現実的に購入をためらう若者が増えているのが現状です。

しかし、本当に金銭的な問題だけが関心の低下の理由なのでしょうか。

#NSX #シルビア #スープラ #スポーツカー #かっこいいクルマ

SUVやミニバンが「かっこいいクルマ」になってきた

1つの理由として考えられるのは、「かっこいいクルマ」がスポーツカーだけではなくなったということです。

実際に、スポーツカーの選択肢が減少する一方で、そのほかのモデルの選択肢が増え、若者に支持されるSUVやミニバン、軽クロスオーバーなどが増加しています。

インターネット上では「スポーツカーは好きだけれど、SUVやミニバンも欲しくなるデザインが多い」といったコメントも多く上がっています。

また、日本自動車販売協会連合会が毎月発表するモデル名（ブランド通称名）別の販売ランキング2025年上半期トップ10のうち7モデルは、SUV、ミニバンを含むモデルとなっています。そのため、メーカーが注力しているのは、販売台数を多く見込めるSUVやミニバンであり、いまやスポーツカーをラインナップするメーカー自体が減ってきています。

とくに、SUVは人や荷物を多く積むことができ、そのデザインも「かっこいい」と感じられ、「かっこよさ」と「実用性」を兼ね備えた魅力的な選択肢となっていることがうかがえます。

ある20代後半の男性は、「趣味だけのクルマを買うより、荷物が積めたり今後家族が増えても使えるクルマが現実的」と話すなど、スポーツカーに対する関心はあっても、日常の使用を考えると他の選択肢が優先する傾向がうかがえます。

このように、スポーツカーよりも魅力的な選択肢が登場し、クルマ選びの価値観が広がったことで、スポーツカーは「唯一の憧れ」としての立ち位置から、どちらかといえばマニアックな選択肢としての存在感を持つようになっているのではないでしょうか。

今もスポーツカーに乗る若者はいるが…

もちろん現在も、金銭的な負担や不便さを乗り越えてスポーツカーを購入する若者は一定数存在します。

インターネット上では、愛車をSNSに投稿したり、同じ車種を持つオーナー同士で情報交換を行うコミュニティが活発に運営されるなど、熱心なファン層が残っています。また、走り屋系マンガやアニメ＆映画の影響もあり、スポーツカーへの憧れを持ち続けている層は依然として存在します。

ある20代男性は、「何年か一度、昔の人気アニメや映画がリバイバル放送されたりすると、やっぱりスポーツカーはかっこいいなと思うし欲しくなる」と語ります。

しかしその一方で、生活スタイルの変化・娯楽の多様化などが進んでいるのも事実です。

インターネットには「かっこいいスポーツカーでデートに行くなんて、今ではバブル期のドラマの世界」「運転は好きだけど、友達が免許を持っていないことも多いのでクルマで出かけようとは思わなくなった」といった声が聞かれます。

そのため、スポーツカーを楽しむユーザーは減少しており、時代の変化によりその位置づけも変わりつつあります。

現代の若者とクルマの関係とは

このように、若者たちにとってスポーツカーは依然として「夢」や「趣味」としての存在感を持ちながらも、あくまでも選択肢の1つとなっています。

かつてはスポーツカーが「かっこよさ」の象徴であり、所有することが目標の一つでしたが、今ではSUVやミニバン、クロスオーバーといったモデルがあこがれの対象となるなど、若者の価値観が多様化しています。

今の若者にとっての「かっこいいクルマ」が多様化していくことで、スポーツカーを実際に購入することはさらにレアケースになっていく運命なのかもしれません。

（終わり）

（写真：トヨタ、日産、ホンダ、スズキ）