「S+シフト」が魅せる“本気の”ギミック新型プレリュードに試乗した。延々と姿を見せられ続け(2年前のジャパンモビリティショーで披露)、早く乗りたくて悶々としていた。歴代モデルに敬意を表してなのか、高価格帯を除けば世界的に人気がない2ドアクーペというカテゴリーで復活させたのは男らしい。 パワートレインは2L直4エンジンに2モーターを内蔵したCVTの組み合わせによるハイブリッドで、「シビック e:HEV」と同じだ。 エンジンの最高出力140ps、最大トルク182Nm、モーターの最高出力184ps、最大トルク315Nm、システム全体として発揮できる最高出力が約200psというスペックも同じ。 じゃあ「要するにプレリュードはシビック e:HEVのクーペですか?」と問われたら「そういう側面もあるけれど、それだけでは片付けられない」と答えることになる。 まずパワートレインは同じだが、制御が異なる。「S+シフト」というスポーティーな内燃機関モデルのような動きと音をリニアに再現した“本気の”ギミックが備わる。擬似的な変速によって加減速時にステップを設けるのだが、モーターのみならずエンジンも実際に一瞬回転を操作してステップを演出するのだ。 アップシフトの場合、発電用モーターとエンジンの一瞬回転を落として回転数変化を演出するとともに、駆動用モーターも一瞬回転を落として乗員に加速の途切れを感じさせる。 ダウンシフトの場合にはブリッピング演出のため、エンジン回転を一瞬上げ、駆動用モーターはアップシフト同様、一瞬回生を途切れさせて“段”を演出する(ダウンシフト時の制御はマニュアル操作時のみ)。 ドライブモードによってはそれぞれスピーカーからのバーチャルサウンドを足して効果を高める。 #新型プレリュード #価格 #試乗記 #プレリュード #プレリュード復活 S+シフトとドライブモードを組み合わせて“6つの走りのキャラ”を演出またS+シフトはドライブモードごとに異なる表現を見せる。コンフォートモードではバッテリーのキャパシティをフルに使って、大排気量のクルマが大トルクを活かして多くの場面をダウンシフトせず高いギアでクリアするかのような走りとなる。 3つのドライブモードとS+シフトのオン/オフを掛け合わせて6つの走りのキャラを味わうことができる。 6つすべてが必要だとは思わないが、スポーツモードでのオンやコンフォートモードでのオンは、これまでのハイブリッド車で味わったことがない体験をさせてくれた。 EVではヒョンデの「アイオニック5 N」がすばらしい疑似制御を見せるが、プレリュードもなかなか楽しい。 とにかく曲がりたがるハンドリング試乗コースの伊豆サイクルスポーツセンターはアップダウンとさまざまな曲率のコーナーが連続するテクニカルな周回路。 まず「GTモード」のS+シフトオフでコースインして加速する。過激ではないが爽快な加速を見せる。シビック e:HEVと似ているというか同じだ。 ただコーナーの連続に差し掛かると、すぐにシビックとの違いに気づく。とにかく曲がりたがるハンドリングなのだ。特性をつかむまでステアリング操作によってこちらが想定するよりも曲がってしまうと感じるほど。 まずホイールベースがシビックよりも130mm短い一方で、トレッドは「シビック タイプR」とほぼ同じなので、タテヨコ比の時点で曲がりたがりだ。 ちなみにサスペンションパーツはシビック タイプRと同じパーツが使われる(チューニングは異なる)。つまりは量産できない。おそらく発売直後に注文が集中し、しばらくして受注停止になるという最近よくあるパターンになるだろう。 幅広い層の人気を集めるわけではないが、絶対的に生産できる量が少ないのでそうなる。昔プレリュードに憧れたオジサンたちに行き渡れば人気は落ち着き、タイプRほど入手困難が続くことはないのではないか。 ホンダの最もオタクな部分が盛り込まれたクルマである話を戻そう。ホンダの各モデルに採用される横滑り防止装置を活用したいわゆるブレーキLSDといえる「アジャイルハンドリングアシスト(AHA)」がプレリュードにも備わるのだが、作動領域を拡大して旋回の初期から制御が入るようになった。 とにかく曲がりたがると感じた特性はこれによる部分が大きいと思われる。やや人工的に曲がっていくようで、運転がうまくなったように感じるタイプのハンドリングともちょっと違う。ハンドリング・ギークが作った印象。 コースが基本的に平滑路面ばかりなので乗り心地については限定的な印象しか得られなかったが、コンフォートモードでは十分にソフトで、スポーツモードは引き締まった印象になるものの、タイプRよりはずっと平和が維持される。 プレリュードはホンダがもつ最もオタクな部分が盛り込まれたクルマだ(賛辞)。電動であることを最大限活用し、実際のペース以上にドライバーの高揚感を引き出すクルマといえる。バーチャルタイプRだ。 一方でコンフォートモード、S+シフトオンにすればトルキーな大人っぽいGTカーになるというその振れ幅がこのクルマの価値だと感じた。 インテリアは使われている素材の質感は高いし、各デバイスの使い勝手もよいのだが、中華タブレットみたいな事務的なディスプレイのデザインをはじめ、ややスペシャルティ感に欠けると感じた。シビックとはガラリと変えてほしかった。 プレリュードはワングレードで価格は617万9800円。ボディカラーがムーンリットホワイト・パールでルーフがブラックの2トーンとなる「リミテッドエディション」が30万円高の648万100円で設定される。オンライン販売のみ、初年度限定、100台のみとの噂。 シビック e:HEVが400万円台であることを踏まえると高いとは思うが、本当に欲しい人をふるいに掛けるということでよいのではないだろうか。安くして人気が出たって待たせるだけだし。 (おわり) |
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