欧州車によるディーゼル旋風・第二弾ボルボ・カー・ジャパンは、新開発の2リッター4気筒ターボディーゼル「D4」エンジンを搭載したモデルを、V40、V40クロスカントリー、S60、V60、XC60の計5車種に設定した。今回はXC60を中心にボルボ製ディーゼルの印象を報告したい。 ほとんどの欧州ブランドはディーゼルエンジン搭載モデルを多数ラインナップするが、欧州の排ガス基準よりも日本の排ガス基準のほうが厳しいため、これまではメルセデス・ベンツとBMW(ミニ含む)を除いて、ディーゼル車を日本に導入する外国ブランドはなかった。 しかし、欧州の排ガス基準の段階的な厳格化に伴い、大掛かりな対策をしなくても日本のポスト新長期規制をクリアできるようになった。このため、今年から来年にかけて次々に欧州からディーゼルモデルが導入される。ボルボはそうした欧州からの「ディーゼル第二波」の先陣を切ったかたちだ。 すべてのエンジンを自社開発へボルボは2010年にフォードグループから独立した後もしばらくフォード製エンジンを使ってきたが、将来的にすべてのエンジンを自社開発する「DRIVE-E」戦略を独立前から打ち立てていた。すでにガソリンエンジンでは、同戦略に則って自社開発したT5(2リッター直4ターボ)エンジンが60シリーズやV40クロスカントリーに搭載されている。 近い将来、ガソリンエンジンは「T3」~「T6」、ディーゼルエンジンは「D2」~「D5」の計8種類のエンジンで(数字はシリンダー数ではなくパワーの大きさ)、全ボルボ車をカバーする予定だ。 今回日本仕様に搭載されるD4エンジンは、パワー的に上から2番目のディーゼルエンジン。ハッチバックのV40からSUVのXC60までの5モデルに搭載されるが、最高出力190ps/4250rpm、最大トルク40.8kgm/1750-2500rpmというスペックは共通で、トランスミッションはアイシンAWと共同開発した8速ATとなる。 優位性を感じるエンジンスペックここで他ブランドの4気筒ターボディーゼルのスペックを見てみよう。 ■ボルボ・D4(V40、V40クロスカントリー、S60、V60、XC60) <1.5リッター> <2.0リッター> ◆BMW・横置き(2シリーズアクティブツアラー) ◆ミニ・クーパーSD(クロスオーバー、ペースマン) ◆ミニ・クーパーD(ペースマン) <2.2リッター> ◆マツダ・スカイアクティブ-D(アテンザ、アクセラ、CX-5) <2.3リッター> <2.8リッター> 他の2.0~2.2リッターのエンジンと比較して、ボルボのD4エンジンがハイスペックなのがわかる。期待しながら、このエンジンを搭載した「XC60 D4 SE」に試乗した。 BMWやマツダと同等かそれ以上の洗練度ディーゼルの場合、まず気になるのがエンジン音と振動だが、どちらも合格点を与えられる。車外で聞くとディーゼル特有のカラカラというエンジン音が響くが、直噴ガソリンエンジン搭載車でもこの程度の音を立てるモデルは存在するし、うるさいというほどではない。 これが車内に入ってドアを閉めると、途端にほとんど気にならないレベルになる。エンジンブロックの両側面に吸音材が貼り付けられているほか、ヘッドカバーにも通常のプラスティックではなくスポンジ状の分厚いものが使われていて、それらが効いているのだろう。 振動もよく抑えこまれている。もちろん、メルセデス・ベンツやBMWの6気筒ディーゼルエンジンよりは細かい振動を乗員に伝えるが、4気筒同士を比較すると、できがよいとされるBMWやマツダと同等かそれ以上の振動の少なさと言える。 走りだすと、音も振動もさらに目立たなくなり、すぐにディーゼルであることを意識しなくなる。けれど、交通量の少ない郊外に出てアクセルペダルを深く踏み込むと、最大40.8kgmのトルクがグイッと立ち上がり、背中をシートバックに押さえつけられることで、再びディーゼルであることを意識させられる。そのまま踏めば高回転域まで頭打ちすることなくパワーが増し、どんどん速度を上げることができる。 積極的に「エコ+」モードを選びたいドライブモードは、「ノーマル(Dモード)」「スポーツ」「エコ+(プラス)」モードの3つから選ぶことができる。スポーツモードは高回転まで引っ張るセッティングとなるが、ノーマルでも十分速いし、ディーゼルの特性上、高回転まで引っ張る走らせ方をしてもあまり旨味はないので、ノーマルのままか積極的にエコ+モードを選びたい。 センターパネルのスイッチを押してエコ+モードを選ぶと、ギアシフトとロックアップのポイントが最適化されるほか、アクセルペダルのレスポンスがマイルドになる(ペダルストローク自体も増える)。 また時速7km/h以下になるとアイドリングストップが作動するのに加え、65km/h以上でアクセルペダルから足を離すとニュートラルになってエンジンブレーキが解除されることで燃費を稼ぐコースト機能も作動する。これらによって燃料消費量が最大5%カットされるという。このモードにしても遅くなるという印象はなかった。 細かい点だが、実践的なアイドリングストップ機能に感心した。同機能を採用するほとんどのクルマは再始動後、一定速度に達しないと再びアイドリングストップしない。例えば、渋滞時、前のクルマが1m進んでまたすぐ止まった場合、こっちも1mだけ進むと、アイドリングストップが解除されてしまい、一定速度に達していないため、再停止してもアイドリングストップしない。ボルボの場合、再始動後に1km/hに達すればアイドリングストップする。 ボルボにディーゼルは似合うエンジンを自社開発するブランドの中で、ボルボは企業規模が小さい部類に入るが、ボルボはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの基本構造を同じくし、なるべく共通部品を用いることで、効率よくエンジン開発を続けている。 両者は約25%が共通部品、約50%が類似部品で構成されるという。このため、D4エンジンはディーゼルにしては軽く、ガソリン2リッターターボのT5エンジン+30kg。ハンドリングに影響を与えるほどではなく、D4搭載モデルはT5搭載モデル同様、軽快なハンドリングを維持している。 JC08モードは18.6km/L。燃料タンク容量は70リッターあるので、実燃費が8掛けとしても1000km以上の航続距離を確保できるのはうれしい。ロングツーリングの機会が多いなら、ディーゼルを強くオススメしたい。 ディーゼルというのは、イニシャルコストが多少高いが、燃費のよさ(と日本の場合は軽油の安さ)でランニングコストを低く抑えることができるのが特徴のひとつだ。長い期間をかけて長い距離を走れば走るほど旨味が出てくるソリューションとも言える。それは元々一度買うと長く使う人が多いボルボにぴったりで、ボルボにディーゼルは似合うはず。 唯一の不満は、すべてのモデルでD4を選ぶと4WDを選べない点。今後、ディーゼル+4WDの組み合わせも出てくるだろうが、なるべく早い時期に実現してほしいと思っている人は少なくないはずだ。 XC60 D4 SE・スペック全長×全幅×全高=4645mm×1890mm×1715mm V40 D4 SE・スペック全長×全幅×全高=4370mm×1800mm×1440mm |
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