ブラッシュアップされた独自のハイブリッドシステム昨年11月の大がかりなマイナーチェンジを受けてから、スバル・インプレッサシリーズの売上げが好調だ。直近の販売台数を見ると、月平均で約4000台。なかでも注目に値するのが、インプレッサシリーズの売上台数の約4割を占めるXVのうち、およそ4割がハイブリッドである点だ。当然ながら、「インプレッサのほかの仕様にもハイブリッドを!」という声は多かったはずで、このたび、5ドアハッチのインプレッサ スポーツにハイブリッドモデルが追加された。 インプレッサ スポーツに搭載するハイブリッドシステムは、基本的にはXVと共通だ。すなわち2Lの水平対向4気筒エンジンと、モーターを内蔵したリニアトロニック(CVT)を組み合わせた、スバルが自社開発したもの。荷室床下に、バッテリーとインバーター、DCコンバーターを一体化したユニットを収めるレイアウトもXVと共通だ。 ただしハイブリッドシステムはブラッシュアップされている。まず、高速域で積極的にハイブリッド用バッテリーを活用するように制御を変更、エネルギー回生の頻度が上がった。また、オイルの粘度を引き下げることなどでリニアトロニックのフリクションロスを低減した。結果として、XVの20.0km/LというJC08モード燃費が、20.4km/Lまで向上している。 いかにもハイブリッド車、というドライビングフィールではないインプレッサ スポーツ ハイブリッドのグレード展開は、「ハイブリッド 2.0i アイサイト」と「ハイブリッド 2.0i-S アイサイト」のふたつ。「S」が付くグレードは17インチアルミホイールがダークガンメタリック塗装になり、サイドウィンドウが濃色ガラスとなる。ほかにシートがパワーシートになり、ステアリングホイールやシフトノブにブルーのステッチが施される。 今回試乗したのは、上級仕様の「ハイブリッド 2.0i-S アイサイト」、ボディカラーはハイブリッドのイメージカラーであるクォーツブルー・パールだ。「さぁ、ハイブリッド車に乗るぞ」と意気込んでスタートすると、肩すかしを食らう方もいるかもしれない。トランスミッションに組み込まれたモーターに求められる役割は、あくまでエンジンをアシストすること。いかにもハイブリッド車、というドライビングフィールではない。 たとえば同時期に発表された日産エクストレイル ハイブリッドはリチウムイオン電池を積み、最高出力41psのモーターを搭載する。対するインプレッサ スポーツ ハイブリッドは、ニッケル水素電池と最高出力13.6psのモーターの組み合わせだ。ただし、このスペックだけを見て「エクストレイルのほうが本格的なハイブリッド」だと判断するのは早計だ。両者のハイブリッドは狙いの異なる、別の性格のものなのだ。 自然なモーターの介入が心地よいシステムを起動して走り始めると、インプレッサ スポーツ ハイブリッドが何を狙ったハイブリッド車なのかが明らかになってくる。発進してから加速して、交通の流れに乗る。こうした一連の動きのなかで、心地よくて上質なパワートレーンだという印象を受ける。 そういった印象を受ける理由はふたつある。まずひとつはモーターがトルクに厚みを持たせているから、気持ち良く加速することだ。30~40km/h程度の市街地走行でも、アクセルペダルを軽く踏み込むと素直にスッと前に出る。トルクのツキがいい。 したがって、ガソリンモデルに比べるとアクセルペダルを踏み込む量や頻度が減っているはずで、その分、燃費も向上しているはず。運転しながら感じるのは「エコ」よりも「心地よい」ということだ。ハイブリッドモデル専用のエネルギーフロー画面を見ていないと気づかないほどモーターの介入が自然なことも、心地よさにつながる。 遮音対策を施したことで上質な印象に上質だと感じる理由は、静かなことだ。ステアリングホイールのスポーク部分に位置する「ECOクルーズコントロール」のスイッチをオンにすると、バッテリーのコンディションにもよるけれど、80km/h以下だとモーターだけで巡航できる。このようにエンジンが切り離された状態が静かなのはもちろんであるけれど、エンジンが回っている状態でも静かなのだ。 開発者によれば、エンジンが回っている時と休止している時の騒音の差を小さくするために念入りに遮音対策を施したとのことで、ガラスを厚くしたりボンネットフード裏や荷室まわりの遮音を強化したりしたほか、フロアマットの裏面に遮音加工を追加しているという。確かに、その効果は現れている。 足回りにはWRXで培った技術を注入パワートレーンだけでなく、身のこなしもガソリンモデルより洗練されている。速度が上がるほどその印象は顕著で、ステアリングホイールを切り込んだ時にスパッと向きを変える。狙い通りに素直に曲がる、質の高いハンドリングだ。リニアリティが高まった理由は、ハイブリッドモデルのパワーアップと重量増に対応するために、サスペンションのセッティングを見直したからだ。 まず、フロントサスペンションは、クロスメンバーの取り付け部分を補強し、横方向の剛性を高めた。リアサスペンションは、グリップ感を高めるべく、ジオメトリーを改めた。 サスペンションのセッティング変更にあたっては、WRXで培った技術を盛り込んだとのことだ。無理矢理に曲げるのではなく、車がみずから曲がりたがっているように感じる秘密はそのへんにありそうだ。ちなみに、タイヤサイズもガソリンモデルの205/50R17から215/50R17に変更されている。 「耳タコ」かもしれないけれど、インプレッサに限らずスバル車の魅力は、回転バランスにすぐれ重心の低い水平対向エンジンと、左右対称の四駆システムの組み合わせがもたらす気持ちのいい走りだ。インプレッサのハイブリッドシステムは、燃費に特化することなく、このモデルが持つ魅力を引き上げている。 滑らかで静かなパワートレーンといい、良好なハンドリングといい、エコ仕様というよりは上級仕様である。ただひとつ残念なのは、ハイブリッドモデルに対応するアイサイトが「Ver.2」にとどまること。進化した「Ver.3」にふれた身としては物足りない。 改良版WRX S4にも試乗。先進安全装備がオプション設定スバルWRX S4/STIにも改良が施された。眼目はふたつで、まず「アドバンスドセイフティパッケージ」をメーカー装着オプションとして用意する。これは、先進的な安全装備をセットで展開するもの。具体的には、走行中や後退時に後側方の危険を察知するスバルリヤビークルディテクションや、左前方の死角を確認できるサイドビューモニター、前方の車両を検知してヘッドランプのロー/ハイを自動で切り替えるハイビームアシストなどで構成される。 もうひとつ、WRX S4の快適性とハンドリングの向上も図られた。全グレードで静粛性を引き上げ、「GT」グレードではダンパーをチューニングすることで乗り心地を改善した。「GT-S」グレードでは、WRX STIに採用していた245/40R18のハイパフォーマンスタイヤをオプションで選べるようになった。 ほかに、「GT-S」グレードでサンルーフが選べるようになったり、全車でUSB電源の出力がアップしたりするなど、地味ながら選ぶ側にとっては実質的でうれしい内容となっている。 インプレッサ スポーツ ハイブリッド スペック【 ハイブリッド 2.0i-S アイサイト 】 WRX S4 スペック【 2.0GT-S アイサイト 】 |
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