ハマれば完璧なハイブリッドキラーにいや、驚いた。今春出たマツダ版“小さな高級車”とも言える新型クロスオーバーの「CX-3」。実力を改めて味わうべく出かけた北海道のトマム試乗会だ。その実、北の大地のうまいモンを食って、楽しくドライブするだけという極楽企画だが(笑)、なるほど欧州並みの道路環境を誇るお土地柄。ふとした瞬間に、東京じゃ発見できないかもしれないCX-3の凄さに遭遇することが出来ちゃったのだ。 「おお、さっきから信号が一個もないなぁ。さすがは北海道!」 編集部員とそんなことを話していた時だ。試乗2日目でリゾナーレトマムから出て約30分。前にクルマもいたので時速60km前後でタラタラ30kmぐらい走ったところだ。ふとした瞬間にメーターを見て小沢は目を疑った。 「ええっマジ! リッター30km!?」。 そう、マツダ自慢の1.5リッターSKYACTIV-D(ディーゼルエンジン)+6速SKYACTIV-DRIVEの組み合わせは、トンでもない低燃費を叩きだしていたのだ。もちろん旭川空港に向けてのゆるい下り道で、ほぼノンストップという好条件。逆に行きは「下ホロカメットク山」のワインディングを走ったり、撮影もしたので160km走って、メーター燃費はリッター16.5km。 それでも随分いいなと思っていたが、ハマればリッター30kmも夢じゃないとは。目的地に着いた時のメーター表示は、リッター28.2km。それでも十分ハンパじゃない! 完璧なハイブリッドいらずだ。 乗り換えもやむなし!? マツダイチのイケメンご存じ「CX-3」は、マツダ気合いのコンパクトカー「デミオ」のエンジンやプラットフォームを使って作った新世代クロスオーバーだ。 エンジンは1.5リッターSKYACTIV-Dの一本に絞っており、基本パーツの7割がデミオと共通だというが、エンジンはピークパワーの105psはそのままにピークトルクを270Nmへと20Nmアップ。さらにディーゼル特有のノッキング音を減らす「ナチュラル・サウンド・スムーザー」をベーシックグレード以外に設定している。 そしてなにより、外観が全く違う。デザイントップの前田育男さんが「一番理想のカタチです」と言うように、デミオとの共通パネルは一切なく、塊感があって、エッジが研ぎ澄まされた魂動デザインはストレートに凄い。マツダ流の5角形グリルや、アクリルブロックLEDを使った猛獣の目のようなヘッドライトはデミオに似てはいるが、よりワイルドだ。 実際、購入動機のナンバーワンは「スタイル」で、現状国内で月に4000台弱ほど売れてるが、兄貴分の「CX-5」とはほとんど食い合わないどころか、お客の約7割が他ブランドからの乗り換えとか。まさにポイントゲッターであり、マツダイチのイケメンナンパ屋!? ってわけだ(笑)。 見た目に惹かれ、中身に納得できるその理由も、北海道でじっくり乗ると十分わかってくる。まずは「見た目」で取ってきた客をしっかり離さない質感の高さだ。 インテリアはインパネデザインにしろデミオと共通だがマテリアルが上質で、グレードにもよるが本革シートが装着でき、ドア内張りもバックスキン風素材が選べる。ドアハンドル周りのメタル風素材にしろ、立体感があってなかなかの迫力。 そして走りだ。まず気づくのが車内の静かさ。エンジン音はアイドリングや低速走行時にそれなりに聞こえるが、他の音が明らかに入ってこない。さらにしばらく走ると、そのエンジン音も気にならなくなってくる。デミオに比べ、フロア鉄板の板厚を上げてボディ剛性を強化し、防振材を増やした効果が間違いなく出ている。 後はステアリングフィールだ。軽い中にも近頃のマツダらしいタメとしっとり感があって、デミオより完全にひとクラス上。いわゆるSUVにありがちなダルさは一切無く、独特のシャープなエッジ感とともに切ったら切った分、リニアに曲がる。 唯一、行きで乗った18インチホイール装着の4WDモデルは、リアシートの乗り心地の硬さが気になったが、その分、シート自体が深く沈み込み、それなりに快適性を補っていた。 味付けのキモは「ロール」にあり余談だが、高校時代にサッカーのU-19日本代表に選ばれた経験を持つアスリートの虫谷泰典エンジニアの話が面白かった。この方は、最近のマツダ車の走り味を決定付けるシェフとでも言うべき人で、曰く、今のマツダ車における味付けのキモは「ロール」、つまりコーナリング中のボディの傾きにあるという。 「とにかくガチガチに固めてしまうのが一番ダメ」で、今はある程度のロールを許容した結果、安定したコーナリングを実現できているという。というか傾けた方が、左右両タイヤのグリップを限界までキッチリ使えるそうで、クルマも逆に安定するんだとか。 とにかく人間の感覚に忠実に動かすことが一番大切で、ロールを許容することで、乗り心地を高められる上に操縦性も増す。それが今のマツダの走り。そういう意味では、CX-3の走りの質はさらに高められる余地がありそうだった。 とはいえ車高が高めのクロスオーバーだけに、その見極めも難しいのかもしれない。しかし、ボーッと走るとリッター30kmも見えてくる“超燃費”に、サイズを感じさせない上質さを持つ“ソリッド”なCX-3。今までにない日本の新たな小さな高級車を感じた北海道でありました。 スペック【 CX-3 XD ツーリング Lパッケージ(4WD)】 |
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