日産は新経営陣で再建を目指す2025年4月1日付けで、イヴァン・エスピノーサ氏が日産の社長に就任しました。 メキシコ出身のエスピノーサ氏は、同国でもっとも優秀な大学のひとつであるモンテレイ工科大学を卒業後、2003年に日産に入社しています。 その後はおもに商品企画に従事し、2019年に専務執行役員、2024年には現職であるチーフプランニングオフィサーに就任しています。 エスピノーサ氏の社長就任にともない、内田誠前社長をはじめとする5名の役員が退任します。 >>この記事のフォトギャラリーを見る また、経営の中枢をになう「エグゼクティブ・コミッティ」のメンバーも刷新され、日産は新たな体制のもとで再建を図ることになります。 |あわせて読みたい| エスピノーサ氏が選ばれた理由46歳というエスピノーサ氏は、47歳で社長となったカルロス・ゴーン氏を抜いて日産史上最年少のトップとなります。 一方、社長就任が発表された直後の会見では、エスピノーサ氏は驚きを隠せない様子であったことから、今回の決定は同氏にとっても青天の霹靂(へきれき)だったようです。 では、なぜこの重要な局面でエスピノーサ氏が舵取りをすることになったのでしょうか? >>この記事のフォトギャラリーを見る ある業界関係者は次のように話します。 「エスピノーサ氏が日産の新社長に推されたことについては、経営陣の若返りや既存の社内政治からの脱却などといった思惑があることはまちがいありません。 ただ、その最大の理由は、エスピノーサ氏がメキシコでキャリアを積み重ねてきたことにあると思います。 メキシコにおける日産は、トヨタやGM、VWグループなどをしのいでトップシェアを誇ります。 さらに、クエルナバカ、アグアスカリエンテス第1、アグアスカリエンテス第2の3つの生産拠点を有しており、2024年の生産台数は70万台近くにおよびます。 この数字は、日本国内および中国を僅差で上回るものでとなっています。 そして、メキシコで生産されたクルマの多くは、日産にとっての最大の市場であるアメリカへとわたります。 経営危機に瀕している日産ですが、その直接の原因はアメリカでの販売不振にあります。 メキシコにおける生産とアメリカにおける販売は密接に関係していることから、北米や中南米をふくむ『アメリカズ』に明るいエスピノーサ氏の手腕が期待されたものと考えられます」 |あわせて読みたい| 最大で25%の追加関税がメキシコ生産車にただ、エスピノーサ氏の前途は多難であるといいます。 前出の業界関係者は次のように話します。 「まず、アメリカのドナルド・トランプ大統領によるさまざまな政策に対応しなければなりません。 そのひとつが関税です。 従来、アメリカとメキシコ、そしてカナダは「USMCA」と呼ばれる経済協定を結んでおり、一定の条件のもとで関税が免除されています。 それにより、よりコストが抑えられるメキシコで生産し、アメリカへと輸出するという方法が成立したわけです。 しかし、トランプ大統領はその経済協定を白紙化し、メキシコやカナダからの輸入に対して関税を課すことを打ち出しています。 詳細についてはまだ不透明な部分もありますが、もし発動が決まった場合、最大で25%もの追加関税が課される恐れがあり、メキシコに生産拠点を置くメリットそのものが薄れてしまいます。 実際、ホンダはメキシコでの生産を計画していた次期『シビック』について、アメリカでの生産へと変更する方針を示しました。 そのうえで、中国や欧州、ASEAN、そして日本といったそれぞれの市場に対応しなければなりません。 さらに、ホンダとの経営統合についても、あらためて協議することになると報じられています。 ・・・トランプ大統領が「相互関税」の詳細について発表するのはまさに日本時間の今夜(現地時間4月2日)です。>>この記事のフォトギャラリーを見る |あわせて読みたい| 「クルマ好き」をアピールしたのは悪手?前出のある業界関係者は「エスピノーサ氏には期待している」としながらも、ある疑問を呈します。 「日産が日本の報道陣向けにおこなった会見では、エスピノーサ氏が『クルマ好き』であることがアピールされました。 >>この記事のフォトギャラリーを見る 実際、エスピノーサ氏は『フェアレディZ』のハンドルを握って出社しているといいます。 もちろん、自動車メーカーの社長がクルマを愛していることは悪いことではありません。 ただ、それを公言することにどのような意味があるのかを考えなければなりません。 たとえば、トヨタは豊田章男会長や佐藤恒治社長が『クルマ好き』であることを積極的にアピールしています。 それがウソであるとは思いませんが、そこにはマーケティング的なねらいがあることも事実です。 これまでのトヨタ車には『無難でつまらないクルマ』といったイメージが強かったなか、トップが『クルマ好き』をアピールし、実際に魅力的なスポーツカーを提供することでそうしたイメージの改善を図ってきたわけです。 しかし、現在の日産に求められているのは『クルマ好きの社長』というよりは、純粋に経営手腕のある社長です。 ネガティブなイメージを払拭する必要があるのも事実ですが、そのためにはなによりもまず業績の回復が必要不可欠です。 そういった意味では、このタイミングで『クルマ好き』をアピールした理由については疑問が残ります」 その手腕が期待されるエスピノーサ氏ですが、社長就任が発表されたあとも日産の株価に大きな動きはありません。 嵐に船出となるなか、エスピノーサ氏がどのような舵取りを見せていくのかに注目が集まります。 (終わり) (写真:アフロ) |あわせて読みたい| |
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