“軽量化”は自動車技術でも最も難易度の高い挑戦国産車及び国産メーカー推しのみなさんこんにちは。理系なクルマ好き諸氏の間でここ最近ちょっと話題になったニュースと言えば、7月17日に発表された「スズキの技術戦略説明会」であります。 トピックとなる技術の柱はいろいろあるのですが、今回はあんまり理系ではない担当でも驚いた“軽量化”に話題を絞りつつ「最近のクルマはどうなってるの?」的な背景をお伝えしましょう。 というわけでお題は「次のアルトを現行モデルより100kg軽量にする」というスズキの予告。一見地味に聞こえるかもしれませんが、実はクルマの開発でも最も難易度の高いチャレンジの一つが軽量化なのです。 |あわせて読みたい| 思いつくままにその理由を挙げていくと…まず、衝突安全性能の評価基準が年々厳しくなっているため、丈夫で乗員を守る余裕のあるボディを作るために重量やサイズは増加中。 そして事故そのものを防ぐための先進安全機能も年々高度になり、そのためのデバイスが増加中。 さらに燃費や排ガスを抑えるといった環境性能を高めるための、ハイブリッド機構や排ガス浄化装置といったデバイスも年々増加中といった具合に、新しいクルマであればあるほど重くなる傾向があるからです。 ちなみに一般的な軽自動車の重量を、ボディタイプ別なんとなく書き出してみると… …といったところが平均的な重量分布ではないでしょうか。軽より一回り大きな登録車のベーシック車種であるBセグメントのコンパクトハッチバックの重量のイメージは下記などとなっています。※「ノート」が重いのはフルハイブリッドのためで、他3モデルはガソリン車の重量。 そんな中、最もベーシックな軽ハッチバックに属する現行のアルトの重量はというと… …ベーシック車種の多いハッチバックでも、「ミライース」(650kg~)に次いで、アルトと「ラパン」が軽いという感じになっています。 その現行型アルトからさらに100kg軽いとなると580kg~ということになり、次期型の10代目アルトは大胆な軽量化で話題となった先代の8代目アルト(620kg~)を飛び越えて、なんと7世代も前の3代目アルト(1988年~)に並ぶのだとか。 >>初代、3代目、先代、現行型アルトをギャラリーで見る 88年の軽自動車と言えばまだエアバッグも装備されず、90年代後半からようやく登録車への採用が始まる衝突安全ボディや、前述した様々なデバイスもほとんどが未装着の状態。もちろん、軽くてエコだから安全装備等は基準以下でも良いということはあり得ず、次期型アルトは現行型よりさらに高度な最新の安全装備や環境装備が求められるのは必至です。 |アルト| |アルト(ハイブリッドモデル)| BEV一辺倒から、多様性のあるエコ技術の再評価へちなみにドイツのコンパクトカーがどうなっているのかもチラ見しておくと、すでに生産が終了しているVWのスモールカー「up!」で900kg台前半。VWの次期主力スモールカーと目される「ID.2」はBEVなのでバッテリー重量がかさむことからも1400kg前後~になることは避けられそうにありません。 では次期型アルトはどうやって軽量化するのか? 当然、新素材や新構造などの開発も必要とされるはずですが、例えばカーボンやチタンといった我々素人でも思いつく素材は高価で生産性も低く、大衆車には向くとは思えません。 >>初代、3代目、先代、現行型アルトをギャラリーで見る それこそあらゆる技術や合理化を総動員しつつ、それらに加えてボディ骨格を極限までシンプルにする、機能を見直して不要な機器を断捨離するといった、言わば雑巾を絞るような総力戦となるのは明らかです。 それでも重量が軽ければ、エンジンもモーターも小さくて良く、資源やリサイクルへの負担も少なく、クルマだけではなく道路や埋設された水道管やガス管へのダメージも小さくなります。スズキによれば車重が200kg軽いと、その分材料は少なく、製造時のエネルギーは20%少なく、走行に必要なエネルギーも6%少なくて済むのだとか。 こうした企業哲学は「小・少・軽・短・美(しょうしょうけいたんび)」というスズキの行動理念として謳われていて、響きからして日本っぽいというか、ど根性論みたいという皮肉も飛んできそうな気もしますが、猛暑と地球温暖化の関係がいよいよ否定できなくなりつつある昨今、その重要性は日に日に増していると言っても過言ではないでしょう。 これまではメディアの論調も含めて“エンジン車を廃止すること”こそがクルマ界における温暖化対策の唯一の切り札であるかのように喧伝されてきたわけですが、ここへ来てトヨタのマルチパスウェイ(脱炭素に内燃機関を含む様々なパワートレーンの合わせ技を用いる)に代表されるように、“BEV絶対論”で見落とされてきたハイブリッドの長所やエンジンの効率の良さなどが再評価されていることも、スズキの戦略につながるものがあります。 もちろん、今後はこうした日本式の小・少・軽・短・美なクルマが唯一の正解になるという極端な話でもありません。大前提として文化や生活のレベルに応じて超高級車やスーパースポーツも含む様々なクルマが存在することは重要なテーゼで、それぞれが実現可能な進化を目指すというスタンスにこそリアリティがあるというのは、多くのクルマ好き諸氏が信じるところでもあるでしょう。 とはいえ“将来の世代に持続可能な環境を残すための有望なソリューション”として、日本メーカーの得意とするクルマの軽量化に、今後も注目であります! (終わり) |アルト| |アルト(ハイブリッドモデル)| |
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