レース現場で壊され進化した新型GRヤリスが公開ーーこれがスタートだよ。ゴールじゃないよ。 1月12日、TOYOTA Gazoo Racing(TGR)は「東京オートサロン2024」の会場で、新型「GRヤリス」を初公開した。発売は2024年春ごろを予定している。 GRヤリスは、名称上はトヨタのコンパクトカーである「ヤリス」ファミリーの一員ではあるものの、中身はヤリスとほぼ別物で、TGRが世界ラリー選手権(WRC)で勝つために生み出したホモロゲーションモデル。 2020年1月の「東京オートサロン2020」で公開され、新型コロナウイルスの影響で投入が1年延期されたものの、2022年のWRCデビューよりドライバーズ/コ・ドライバーズタイトル、マニュファクチャラーズタイトルの3冠を2年連続(ヤリスWRCも含めると3年連続)で獲得した生粋のレーシングウェポンである。 デビューから丸3年、WRCだけでなく、全日本ラリー選手権をはじめとした世界各国のラリーや、全日本スーパー耐久選手権(S耐)など多くのモータースポーツへと投入されてきたGRヤリス。開発陣は、車両を限界まで追い込み、壊してくれたドライバーへ「壊してくれてありがとう」を合言葉に、故障原因を徹底的に追求し改善を重ねてきたという。 冒頭のセリフは、2020年8月のラインオフ初日に豊田章男会長(当時社長)がチーフエンジニアである齋藤尚彦氏(以下:齋藤CE)に送った言葉だが、TGRが“進化型”と呼ぶ今回の新型は、レースという極限状況下で鍛えられてきた進化の結晶なのである。 >>本当に「欲しい!」と思える1台――進化型GRヤリスに試乗。新旧比較でその真価を体感した >>GRヤリスの価格・スペック詳細はこちら >>全国のサーキット・走行会・イベント情報がまとまった「みんカラサーキット」はこちら レース現場の声を反映したデザイン変更エクステリアには、モータースポーツ現場の声が反映された。 フロントバンパーは、冷却性能高めるために開口部を広げ、ホイール周りを整流し空力性能も向上させた。さらに、ラリー競技においてバンパーサイドが壊れやすいことに着目。修理性の向上と修理費抑制のために3分割構造を採用する。 またロアグリルは、従来樹脂製だったものをスチール製へと変更。飛び石やタイヤカスが当たっても割れずに潰れることで、インタークーラーを保護しレースでの生存率を高めてくれるという。 「モータースポーツの現場では、実際にレーシングチームが樹脂(のグリル)の後ろに金網を取り付けていた。だったら最初から金網にしようということで採用した」(齋藤CE) リア周りでは、テールランプが一文字へと変更されたことが大きな違いだ。これは、レーシングドライバーで新型GRヤリスの開発ドライバーを務めた大嶋和也選手が、リアから見た時にGRヤリスならではの特別感が欲しいという一声で採用が決まったという。 また、バンパーロアに装備されていたバックランプは、ラリー走行中に飛び石で破損することが散発したためリアガラス下へと移動。さらに、リアスポイラーに装備されていたハイマウントストップランプは、スポイラーを容易に交換できるようこちらも車両中心部へと移設された。 ドラポジ変更と“ヤリスと同じ”からの脱却インテリアが大きく変更されたのも新型GRヤリスのトピックだ。 従来はヤリスとほぼ共通デザインだったが、ドライビングポジションを25mm下げステアリング位置を変更。ポジションの変更に伴い、意匠性を排しS耐や全日本ラリー車両のようなレーシングカー然としたコックピット風デザインへと改められた。 さらに、ハーネスで体をシートに固定した状態でも使いやすいようスイッチレイアウトを見直し操作性を高めたほか、ポジションの変更に伴い、ドアスイッチの位置も変更されるなど、細かなチューニングが施されている。 >>本当に「欲しい!」と思える1台――進化型GRヤリスに試乗。新旧比較でその真価を体感した >>GRヤリスの価格・スペック詳細はこちら >>全国のサーキット・走行会・イベント情報がまとまった「みんカラサーキット」はこちら 競技中に悲鳴を上げたエンジンと8速ATの採用「2021年、勝田範彦選手が全日本ラリーの初戦にGRヤリスで出場した際、ラリーのフィールドでエンジンがブローしてしまった。ここから私たちの燃焼技術や部品の開発が再スタートした」(齋藤CE) エンジンは、「GRカローラ」で採用された技術を投入し、最高出力304PS/最大トルク400Nmへと向上させている。動弁系を強化し、軽量ピストンを投入。オイルクーラーを多段化し、クーリングファンを高出力化することで熱対策にも力を入れた。 コンパクトなエンジンルームに高出力エンジンを搭載するため、課題となるのがやはり熱。フロントバンパーサイドにエアアウトレットを設け、サブラジエターやインタークーラースプレーなどで構成される「クーリングパッケージ」をオプションで用意するなど、熱との格闘の跡が見て取れる。 8速ATはゲームチェンジャーになるか?「より多くの方に走る楽しさを提供し、モータースポーツの裾野を広げたい」というモリゾウ選手(豊田章男会長)の想いから、8速AT「GR-DAT」を設定したのもポイントだ。 AT制御ソフトをスポーツ走行用に最適化し、ブレーキの踏み方・抜き方、アクセル操作などまで細かく感知することで「ドライバーの意思を汲み取るギア選択」を実現。変速クラッチに高耐熱摩擦材を採用し、世界トップレベルの変速スピードを有するという。 「レースでMTと同等に戦えるAT」というのがウリで、モリゾウ選手が初めて乗った際に「ゲームチェンジャー」と賛辞を送ったという。 そのほか、ローンチスタート機能を搭載し、多段化とクロスレシオ化によりパワーバンドを活かした走りを実現。「RZ “High perfomance”」には駆動力コントロール向上のためにトルセンLSDも装備するほか、サーキットの連続周回にも耐えられるようATFクーラーも追加される。 >>本当に「欲しい!」と思える1台――進化型GRヤリスに試乗。新旧比較でその真価を体感した >>GRヤリスの価格・スペック詳細はこちら >>全国のサーキット・走行会・イベント情報がまとまった「みんカラサーキット」はこちら 勝利のための進化に終わりはないGR謹製の4WDシステム「GR-FOUR」の駆動配分にもメスが入れられている。前:後の駆動配分は以下の通り。 <現行型> <進化型> 細かなチューニングは前出の大嶋選手の手によるもので、「GRAVEL」はまさに“大島モード”と呼べるこだわりの仕上がりとなっている。 「サーキットで運転が上手い人が攻めるなら駆動配分が固定される『GRAVEL』が一番しっくりくると思うので、ぜひ試してほしい。(駆動配分を可変する)『TRACK』は、限界領域を使える人だと違和感を感じてしまう状況もあるかもしれないが、その手前の領域で走る分にはより、よく曲がるし曲げるためにクルマがアシストしてくれるので、その辺りも体感してもらいたい」(大嶋和也選手) そのほか、ショックアブソーバー締結ボルトを1本から3本へと変更することでアライメント変化を抑制したり、ボディのスポット増しと構造用接着剤の塗布面積拡大によりボディ剛性を強化するなど、細かな改良は多岐にわたる。 初の大幅改良となった今回の進化型GRヤリス。インパネまで新規で起こすなど、一般の感覚からすれば過激かつマニアックな“変化”に思えてしまうが、GRヤリスはあくまでもレースで勝つための「マシン」であり、「普通の市販車」とはその出自も開発方法も異なる。きっとファンは、そのマニアックな“進化”に痺れるはずだ。 そして進化型GRヤリスは、TGRの掲げる「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を旗印に、また新たにレースフィールドへと投入され、壊され、さらに進化を続けていくだろう。ここが新たなスタートであり、ゴールではないのだから。 >>本当に「欲しい!」と思える1台――進化型GRヤリスに試乗。新旧比較でその真価を体感した >>GRヤリスの価格・スペック詳細はこちら >>全国のサーキット・走行会・イベント情報がまとまった「みんカラサーキット」はこちら |
GMT+9, 2025-6-24 23:17 , Processed in 0.056309 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .