名前はMIRAIなのに、先進装備がほとんど備わらない私がトヨタMIRAIを購入してから、もうすぐ3年。そろそろ車検の時期が近づいてきた。多くの人にとって、まず車検を通して乗り続けるか、それとも別の選択肢を検討するか迷う時期じゃないかと思う。もちろん私も。現時点での思いとしては正直、もう手放してもいいかな…という方に傾きつつある。 FCV=燃料電池自動車それ自体には、とても満足している。水素ステーションの数は期待ほどは増えていないとは言え、満充填で500km近い航続距離、ガソリンや軽油を入れるのと変わらない充填時間のおかげで、実はそれほど不便は感じていない。まあ慣れてしまったという部分もあるのだろうし、都内在住であることも大きいのは解っているけれど。 じゃあ何が不満なのかと言えば、車両に、先進装備の類が備わらないことだ。先進安全装備、運転支援装備を見ると、ACCは付いているけれど30km/h以下ではキャンセルになるし、操舵アシストは備わらない。車線逸脱警告もナシ。また、ナビゲーションシステムは昔ながらのタイプだし、パーキングブレーキは足踏み式だったりする。この辺りはすべて、デビューの時から不満に思い、また指摘してきた部分である。 しかしMIRAIは登場以来これまで一度もマイナーチェンジを受けていない。一般向けの納車が始まった2015年4月から、すでに3年が経過していても実施されないということは、近々にそういう予定は無いのだろう。 テスラがなぜ魅力的なのかを考える必要があるこの3年で世間の論調は変わり、FCVの未来には暗雲が立ち込め、やはりEVが次世代自動車の主流だという声が大勢を占めているのが現状だ。それについては反論の材料は山ほどある。しかしながら純粋に目の前にMIRAIとテスラ モデルSを並べた時に、1台のクルマとしてモデルSの方が魅力的であることは、率直に言って明らかだ。 先に不満として挙げたような高度運転支援技術やテレマティクスといった部分で、モデルSは大胆なまでにアップデートを繰り返し、常に最先端のものを手にしてきた。更に言えば、スタイリングはセクシーで、インテリアも触れてみたいと思わせる魅力があふれている。 モデルSには、仮にパワートレインが何であっても欲しいなと思わせる要素が、いくつも備わっている。クルマの未来を感じさせるものをいくつも持っている。一方のMIRAIは、FCVであるという以外にはほとんど、そうしたアピールの要素が無い。私に言わせれば、両車の明暗を分けたのは間違いなく、そこだろう。 テスラのそうした貪欲な考え方は、MIRAIがデビューした時にはすでに明らかになっていた。それだけに私としては、MIRAIにも素早いアップデートを期待していた。たとえば同じトヨタのアクアは、人気モデルであるにも関わらず、いや人気モデルだからこそ早いサイクルで改良を繰り返しており、実際にアクアからマイナーチェンジされたアクアへ買い換える人も少なくないと聞く。アクア自体には満足していて、車検などの機会で別のクルマにするよりは、進化したアクアをまた欲しい。そういう考えである。 MIRAIが失敗すればFCVの未来も狭められてしまう仮にMIRAIが最新のテレマティクスを装備したり、ADAS系の充実が図られたりしたら、次にまたMIRAIに乗り替えるのもアリ。そう思えるくらいに今のMIRAIを気に入ってはいる。けれど、実際にはその可能性は高くはなさそう。筆者と同じように、早い時期にMIRAIを購入した人達はどう考えているのだろう。いや、すでに中古車情報サイトを見ると、思った以上の数のMIRAIの物件情報が出ていることは、何かを物語っているのかもしれない。 別にトヨタも、MIRAIを放置しているわけではない。当初はとにかく予約を捌き納車していくことが重要だったはずだし、今でもグローバル販売台数を見れば、当初聞いた生産台数目標をほぼクリアしてもいる。つまり、現状は概ね計画通りであり、無理に販売促進的なことをする必要には迫られていないのかもしれない。 更に、日本では4年間の補助金縛りもあるから、基本的にその間は乗られるはずだと考えられてもいるのだろう。それでも、すでに売却してしまった人は、あるいはそれも選択肢のひとつだと考えている私は、補助金を返却することになっても…と思っているのだけれど。 2020年にはFCV関連コストは半減となるという報道もあった。本気になるのはそれからで、それまでは普及前の黎明期だし、現状のままで…という計画なのだろうか。けれど、仮に2020年前後にそうしたFCVが登場するとして、買うのは誰だろう。少なくとも今、MIRAIに乗っている人は、また同じようなことになるなら、それほど興味をもたないのではないか。 今、FCVに興味を持っているのは間違いなく先進技術にも大いに関心を抱いている人達だ。本当ならば彼らに向けたアピールが今すぐ必要ではないだろうか? それこそ2020年以降にも繋げていくために。この数年で、クルマに求められるスピード感は明らかに変化しているのである。 これはMIRAIというクルマがどうなるのかというだけの話ではない。MIRAIが成功しなかったら、それはFCVそのものの可能性自体を大いに狭めかねないだけに、私は懸念しているのだ。もちろん、結局クラリティ フューエルセル(編集部注:2016年の発表当初、翌2017年にはホンダが市販したいとしていたFCV)の一般発売をしないままでいるホンダにだって言いたいことは山ほどある。さて、メルセデス・ベンツは一体どう出るつもりだろうか? せめてプリウスPHVの大画面とACCくらい付かないかな…叶わなそうなことを考えながら、溜め息をついている昨今の私である。 |
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