2030年にドイツではエンジン自動車が買えなくなる?9月に開催されたパリモーターショーでは、欧州メーカーが多くの電気自動車(EV)を発表していた。ここまで欧州メーカーがEVに本気になるとは関係者も驚いているが、その急先鋒はドイツのプレミアムブランドだ。ジャーマン3ことメルセデス・ベンツ、BMW、アウディはどのくらい本気なのだろうか。それぞれのメーカーはどんな戦略を持っているのだろうか。今回のコラムでそのあたりを探ってみたい。 ショーに先立つ9月23日、ドイツ連邦参議院が「2030年以降はエンジン車の新規登録は中止する」という決議案を採択して話題になった。このニュースを聞いたとき、私はエンジン車を生んだドイツが「エンジンの死刑宣告」を考えていることを、にわかには信じられなかった。ドイツは連邦政府という政治形態を持っているので、各州政府は何を考えているのか調べてみた。 BMWやアウディがあるバイエルン州とポルシェやメルセデスがあるバーデン=ヴュルテンベルク州は法案に反対していた。この2つの州はEVを推進する緑の党が力を持っているが、それでも「2030年以降のエンジン車の死刑宣告」に反対している。一方、ドイツ最大の自動車メーカーであるVWがあるニーダーザクセン州は賛成してしまった。VWのディーゼルゲート問題で揺れ動く同州はどう見てもやけっぱちになったように見える。その結果、各州の代表が集まる連邦参議院の総意としてこの死刑宣告案はドイツ政府に提出され、ドイツの週刊誌がスクープすると大騒ぎになったのだ。法案なのですぐに効力を発揮するわけではなく、ドイツの交通大臣は「馬鹿げた法案だ」と切り捨てているが、EUの方針を決める欧州委員会にも一石を投じたといえる。 ジャーマン3はEV開発のアクセルを踏むパリモーターショーで見えてきたジャーマン3のEV戦略を見てみよう。トップバッターはメルセデス・ベンツ。ツェッチェCEOは「単にEVにシフトするというものではなく新しい自動車メーカーのあり方を提案する」と述べ、「CASE」と書かれた4文字のコンセプトが発表された。Cはコネクティビティ、Aはオートノマス(自動運転)、Sはシェアカー、Eは電気駆動の頭文字だった。 その目玉となる新コンセプトカーして「ジェネレーション EQ」と命名されたSUV風のバッテリーEVカーが発表された。まるで「テスラ モデルS」を独走させないと言わんばかりのEVだ。四輪駆動でポルシェ並のパフォーマンスを持ち、航続距離は最長500kmを謳う。 一方、私も取材に参加した10月中旬に開催されたメルセデスの次世代エンジンのワークショップでは、ガソリンとディーゼルを合わせた5つの新エンジンが発表されている。1気筒=500ccのモジュールコンセプトで開発される次世代エンジンは、4気筒2Lディーゼル、直列6気筒3Lディーゼル、4気筒2Lガソリンターボ、直列6気筒3Lガソリンターボ、V型8気筒4Lガソリンターボだ。これらはモーターと組み合わせてハイブリッドにも適応する。つまり、メルセデスの本音はエンジンと電気を上手に組み合わせたモデルラインナップで、ピュアEV=ゼロエミッションの「EQ」シリーズをその中心に位置づけるというものだ。 アウディもEVを積極的に推し進めるが、最近発表されたニュースで目を引くのは、長く続けてきたWEC(ル・マンなどの世界耐久レース)から撤退し、EVで走る「フォーミュラE」に来年から参戦するというものだ。親会社VWのディーゼル補償問題で多額の利益が必要なので、コストのかからないEVレースにシフトするという経済的な理由もあるが、メルセデスと同じように新しいモビリティの可能性にチャレンジする姿勢は鮮明だ。 BMWはジャーマン3の中ではもっと早くからEVにシフトしていた。持続可能なモビリティブランドとしてまったく新しいブランド「i」を立ち上げ、バッテリーEVの「i3」に力を注いでいる。今年マイナーチェンジした「i3」は航続距離も大幅にアップし、より多くのユーザーを取り込もうとしている。トヨタとの提携を活かして、水素燃料電池車も近いうちに発表する予定だ。 メルセデスの「CASE」が示しているように電気駆動(EVやハイブリッド)と自動運転は時代のトレンドになることは間違いない。今回の法案採択について、ドイツの各メーカーは基本的には反対しているし、2050年頃まではエンジンと電気が共生すると考えているのだろう。しかし、そんな彼らにとっても、電気自動車へのシフトは将来的には必須なのだ。「電気もない、自動運転もないクルマ」は今後、携帯電話のガラケーのような存在になってしまいそうだ。 |
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