次期Cクラスはキープコンセプトのデザインで登場メルセデス・ベンツは間もなく新型「Cクラス」を発表するが、我々はこの5世代目にあたるCクラス(開発コード:W206)の量産試作モデルの最終テストに同行し、事前情報を入手することができた。この特別なイベントに同行してくれたのはCクラス開発担当主査のクリスチャン・フリュー氏。出発地点はシュトゥットガルトのメルセデス・ベンツ本社だ。 現行モデルはFMCを控えているにもかかわらず2019年には全世界で40万台、2014年から発売されている日本でも好調な販売を見せている。4世代目の成功を考えるとフリュー氏が率いる開発チームが決して冒険をしない、キープコンセプトで開発を進めようと考えたのは順当な判断だろう。 次期Cクラスを屋外の駐車場で見た時、カムフラージュはされているが、そのプロポーションとボディサーフェスは新旧の類似点から間違いなくCクラスの後継車であることが分かった。具体的はキャビンが後方にレイアウトされるクラシックな後輪駆動プロポーションと、全体的に柔らかな曲面で覆われたエレガントで官能的なボディデザインだ。 フロントグリルはカムフラージュされていたが、日本向けを含むほとんどの市場ではグリル中央にスリーポインテッドスターがレイアウトされるスポーティなデザイン、つまり昨年発表されたEクラスに似ていると説明された。一方、クラシックなメッキ・グリルとボンネット状のスリーポインテッドスターの組み合わせは、中国をはじめとする一部の市場に提供される予定である。 同上試乗したのはC300 4マチック AMGラインの量産試作車で、実際にこの車を使って最終評価テストが行われるため、室内にはケーブルや緊急スイッチなどが見られる。カムフラージュの隙間からも大きくパワフルな印象を与えるボンネット上の2本のパワードームや、明らかにワイドになったフロントのトレッドなど確認できる。 新型Cクラスのデザインはキープコンセプトゆえにパネルや細かなパーツには大きな変化はないが、サイズは変更されている。 これまで3世代にわたってCクラスを担当してきたフリュー氏はW206の全長は4741mmで現行モデルよりも65mm長く、その内訳はフロントオーバーハング10mm、ホイールベース30mm、リアオーバーハング25mmとなっていると説明してくれた。 このサイズの拡大は、モデルチェンジ毎に大きくなってきた「Aクラス」や「CLAクラス」とセグメントの差をはっきり区別するため。さらには「アウディ A4」や「BMW 3シリーズ」に対抗するためである。 5世代目のCクラスには今回試乗したセダンだけでなく様々なバリエーションがあるが、とりわけ人気の高いワゴンが次に登場する。さらに順を追って、クーペ、カブリオレもスタンバイしている。さらにCクラスのラインアップに初めて登場するのが「オールテレイン(ALLTERAIN)」で、その登場は2022年以降になる。 やや広がった新型Sクラス譲りのデジタルコックピットCクラスのキャビンを見回すと、発表されたばかりの新型「Sクラス」から多くを引き継いでいることがわかる。インスパイアード・バイ・Sクラスだ。メーター類は全てデジタルインストルメントディスプレイで、ダッシュパネル中央には大きなセンタータッチディスプレイが備わる。ダッシュボードにはそのほか中央に3個と両脇に各1個、デザインアイコンにもなっているジェット噴射口のようなエアアウトレットが並んでいる。エアコンの温度によって吹き出し口の周辺がブルーからレッドに変わってゆくのが面白い。 AR技術を使ったヘッドアップディスプレイをはじめとする多くのデジタル機能は全てメルセデス・ベンツの最新のオペレーションシステム(OS)であるMBUXがコントロールしている。システムのソフトウエア更新はOTA(無線による更新)でサポートされているが、これはCクラスとしては初めての機能である。 インテリアデザインはメルセデス流に完璧にモダンでラグジュアリーで、オーナーが頻繁に触れる素材は全てソフトタッチ、しかも見た目の仕上げも高品質である。もちろんそれほど重要でない部分、滅多に触れないような隠れた場所の素材(プラスチック)はそれなりに安っぽいのは仕方がない。メカニカルスイッチ類はできるだけ省略され、目につくのはセンターディスプレイの真下にあるハザードスイッチくらいである。 室内は広くなった印象を受けたが、それは事実で、ドライブしているフリュー氏は「パッケージングを見直した結果、前席の肘周りが22mm、全長がのびたおかげでリアシートのレッグルームは35mm延長されました。ただし周辺のデザインも変えているので、実際に乗った印象は数字以上だと思います」と語った。 新型Cクラスはメルセデス・ベンツのMRA(モジュラー・リア駆動・アーキテクチャー)と名付けられたプラットフォームの上に構築されている。これは新型Sクラスに採用されているものだ。素材は他のブランドではアルミの使用範囲が増えているが、新型Cクラスではスチール、すなわち高張力鋼板が高い割合で採用されている。 シリーズ全体に採用されている48Vのマイルドハイブリッドを含めたエレクトリックアーキテクチャーも新しい。メルセデスではCクラスにガソリンとディーゼルを両方のエンジンを残しているが、全てが4気筒、そしてmHEVが搭載されている。フリュー氏の説明では、新しいCクラスに6気筒エンジンを採用しないのは、MRAではエンジンルームの大掛かりな変更とフロントのオーバーハング延長というプロポーションに関わる問題が起きてしまい、ひとクラス上のプラットフォームを使うことになってしまうからだという。 このC300 4マチックは4気筒2リッターターボを搭載し、ギアボックスとクラッチの間にISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を装備。出力は190kW(250ps)と15kW(20ps)をそれぞれ発生する。ISGは加速時に30秒間、20kW(26ps)のオーバーブーストでエンジンパワーを後押しする。トランスミッションは9Gトロニック(9速AT)で4輪を駆動する。 新型Cクラスの中で大きな話題はPHEVである。「C300e」(ガソリンエンジン仕様)あるいは「C300de」(ディーゼルエンジン仕様)はこれまでと同じく共にP2と呼ばれるギアボックス内に電気モーターをレイアウトする。大きな変更点はバッテリー容量で旧モデルの13.5kWhから11.9kWh増の25.4kWhへと増大させたことで、その結果、EV航続距離は50kmから100kmへと大幅な延長を遂げている。 フリュー氏のドライブは非常にスムースで、それが一層、新型Cクラスの滑らかで快適な乗り心地を感じさせてくれる。実はこれこそがニューモデルの目指したところでもあるのだ。 テスト中のC300には採用されていないが、Cクラスには後輪ステアリングシステムもオプションで用意されるはずで、スポーティで安定したハンドリングを提供できるに違いない。 およそ4時間、300km近くにおよぶドライブで、新しいCクラスが現行モデルの強みをさらにアップグレードした兆候を感じとることができた。間も無く発表されるCクラスは2021年に最も期待されるニューモデルの一台になることは間違い無いだろう。 レポート:グレッグ ケーブル(Greg Kable/Kimura Office) |
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