1914馬力、2360Nm、500kW急速充電対応などすべてが規格外電気自動車のスタートアップはアメリカのシリコンバレーか中国の深圳(シンセン)かと思っていたが、いま世界でもっとも注目を集めている企業はバルカン半島のクロアチア共和国ザグレブ郊外にあった。2009年に創業した「リマック・アウトモビリ」で、あのポルシェが出資するほか(ポルシェは増資も検討中)、ブガッティを買収するのではという噂も出ているほどだ。 そのリマックが6月1日に発表したハイパーEVスポーツカー「ネヴェーラ」は最高速度412km/h、0-100km/h1.85秒、300kmまで9.3秒で到達するモンスターだ。これを可能にしているのはフロントに2基(それぞれ最大出力200kW、最大トルク280Nm)、リアに2基(500kW、900Nm)、合計4基の電気モーターで、システム出力は1914馬力、最大トルク2360Nmを発生する。 搭載されるバッテリーは120kWhの容量をもち、なんと最大で500kWの充電能力を持つ。ちなみにこんな性能の急速充電器は少なくとも街中には存在ない。もしこのシステムが存在すれば20分で80%の充電が可能になる。 レポーターはこのハイパースポーツカーに試乗するためにザグレブ郊外の飛行場にやってきた。迎えてくれたリマックの創立者でオーナー社長のメイト・リマックは気さくで、“バルカン半島のイーロン・マスク”という名声に戸惑っている感じだった。 駆動系も電池もインフォテインメントも自社開発滑走路で初対面したネヴェーラのサイズは全長4750mm、全幅1986mm、全高わずか1208mm、ホイールベース2745mmとヒラメのように路面にへばりついている。前ヒンジのガルウィングを跳ね上げて乗り込むキャビンは意外なほどにルーミーで、やや太めで身長1.85mの私でも十分なスペースを提供している。 合計6個のインフォテイメント画面をもつコックピットはカーボンとタン色のレザー、黒のアルカンターラで仕上げられ、フェラーリ、ランボルギーニなどのハイエンドスポーツカーにも十分に太刀打ちできそうだ。ボディはフルカーボン製でドライウエイトは2150kgと発表されている。 実はネヴェーラは2018年のジュネーブ・オートショーで「C_Two(シー・トゥー)」の名前で初公開済みで、2020年には発売予定だった。一部ではコロナのためと言われたが、社長のマイト・リマックは「それだけではありません。クルマが非常に複雑なために時間が掛かったのです。しかも何から何まで、駆動系や電池、インフォテイメントまで自前でしたから」と振り返る。 今日の自動車は最低でも6000個のパーツを必要とする。EVなら電池関連だけでも1万個は下らない。それを全部自社内でやったとなれば、時間が掛かったのは当然だ。直接供給を受けたのはミシュラン タイヤとブレンボのセラミックブレーキだけだという。 150台限定で3億円オーバー。レベル3自動運転も想定リマックのチーフテスターがサイドウインドウからローンチコントロールの方法を再確認してくれる。大きく深呼吸をしてスターターボタンを押すと1.4メガワットの高エネルギーが各部に流れるようなヒューンという電子音が耳に届く。 左足でブレーキペダルを押さえつけながらドライブペダルを踏み込みとむと、電気エネルギーはおよそ2.2トンの車体をまるで重力で落下するかのように加速させる。スピードメーターはコマ落とし画面のように100km/h、160km/h、200km/h、250km/hと数字が増加し、その加速は300km/h近くになっても一向に衰えない。やがて前方に滑走路の端が見えてきたので、念のために310km/hを超えたあたりで速度を緩めると、今度は300KW の回生力でブレーキングが始まるがクルマの姿勢は全く安定している。直前まで、アクセルペダル操作に対する加速には余裕があったので、ネヴェーラの最高速度は間違いなく400km/hを超えるだろう。 加速テストを終えて一般公道でのハンドリング・テストを始める前に、メカニックがタイヤをチェックしてくれている間、これまでのスーパースポーツカーならオイルの焼けた匂いや、エグゾーストパイプ/マフラーからチリチリという熱が発散する音、あるいはゴムの焼けた臭いが漂ってくるが、ネヴェーラでは何も起こらない。 すべて異常なしとの事で飛行場を後にして一般道路へ入る。このハイパーEVスポーツカーはハンドリングの面でも新分野を開拓したと言える。前後左右のパワーバランスは運転や路面状況によって瞬時に最適化される。それはコーナリング中に明らかで、一輪がわずか一瞬でもスリップすると後部に搭載されているコンピューターが素早く状況を計算して、最適のトルクをその車輪に与えバランスを修正する。 その結果ネヴェーラは何事もなかったかのように、文字通りオンザレールの安定した姿勢で連続するカーブをクリアして行く。ドライブモードをコンフォートにするとLMP1ルマンカー並みに高い剛性のカーボン製ボディは意外なほどに快適な乗り心地を提供する。 また時速50kmに制限された村を大人しく通過するのも全く問題ない。問題があるとすればその強烈な加速力のために、どこでも、あっという間に想像を超えた速度に達してしまうことで、速度標識に注意していないと免許がいくつあっても足りない。しかし、このネヴェーラには間もなく13個のカメラと12個の超音波センサー、そして6基のレーダーによるレベル3のセミ自動運転が可能になるという。このシステムは世界中のサーキット情報も収録され、オーナーはそこでAIによるドライブトレーニングを受けることもできるのだ。 このまさに夢のクルマの価格は240万ユーロ(約3億1700万円)で、年産50台の予定で150台が限定生産されるが、主にアメリカ、ヨーロッパ、アラブ首長国連邦などから問い合わせが届いておりり、予約リストは徐々に埋まっているという。可処分所得に余裕のある方は一度、https://www.rimac-automobili.comを覗いてみるのも良いかも知れない。 レポート:T.Geiger/YK/Kimura Office スペック【 リマック ネヴェーラ 】 |
GMT+9, 2025-6-23 03:52 , Processed in 0.068733 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .