来年本国で導入予定の完全自動バレーパーキングに驚く自他ともにベストカー・イン・ザ・ワールドと認める「メルセデス・ベンツ Sクラス」の11代目にあたるW223が誕生、ようやく試乗会が開催された。ベンツ本社に近いシュトゥットガルト空港の駐車場が集合場所とは意外だが、実はここで驚きの演出があった。 駐車場出口でスマホを渡され、指示通りの操作を行って待っていると、なんと無人のSクラスが目に前に現れた。つまり試乗車には来年から導入が予定されている自動バレーパーキングシステム(AVP、自動運転レベル4に相当)が搭載されていたのである。 自然光の下で見るニューSクラスはわずかに低くワイドになったグリル、切れ長にサイドへ回り込んだヘッドライト、シャープなテールライト以外にエクステリアに大きな変化はないが、全体にスマートになった感じだ。おそらく要因はサイズで、ショートホイルベース版で全長5179×全幅1954×全高1503mm、ホイルベース3106mmと現行モデルより54mm長く55mmワイドになったものの、高さは10mm増に止まっている。長く、幅広く、低く、安定して見えるのだ。 ドライバーが近づくと自動的に伸びてくるリトラクタブル式のドアノブを引いてキャビンに入ると正面には12.3インチ、ダッシュ中央には12.8インチの大型ディスプレイが2枚並んでいる。これらの画面はOLEDで旧モデルよりも64%大きいが、さらに私の正面には3Dディスプレイがあって数字や情報が立体的な映像として浮かび上がり、未来的だ。ここには顔認識に必要な2基のカメラも内蔵されている。さらにフロントウインドウに実質77インチ画面に相当するAR機能付きのヘッドアップディスプレイもオプションで用意される。ちなみにドイツでは全てオプションで、これだけで45万円はする。 ダッシュボードのメインモニターにPINコードを入力するとウエルカムメッセージと共にスタートの準備が整う。「ハイ、メルセデス!」で起動するMBUXはさらに改良され27カ国語を理解するほか、母国語以外を喋る外国人のアクセントも受けつけるようになった。アルミ、高級レザー、豪華クルーザーのような仕上げのウッドを使ったインテリアは高級感に満ちており、キャビンの照明は1.6cmごとに埋め込まれた合計260灯のLEDライトが受け持つ。メルセデスがこの空間を「ウエルネスオアシス」と名付けた理由はここにある。 クラス最高の完成度。雲上の乗り心地だが運転しても楽しめる試乗したトップモデルの「S580 4マチック」は503PSと700Nmを発生する4L V8エンジンを搭載している。 このトップグレードは来年発売予定で、正式なデータは未公表だが、最高出力は370kW(503PS)を発生する3982ccのV8で、48Vマイルドハイブリッド用のISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)が 15 kW(20PS)でアシストする。最大トルクは700Nm、9速ATの9G トロニックを組み合わせ最高速度250km/hに達する。 空港からミュンヘン方面へのアウトバーンに入りしばらく南下するとやがて速度制限解除区間が現れる。低速から高速まで淀みのない加速はもちろん、130km/hプラスでの巡航~今日許されている250km/hに至るまで路面からの余計な振動やノイズを伴わないまさに雲上のドライブを享受することができた。それを実現させるのは快適なシートで、内蔵された19個の電気モーターが微妙なアジャストや、きめ細かなマッサージ機能を提供する。 だからといってSクラスのドライブは必ずしも受動的なものではなく、しっかりとしたロードホールディングを約束するエアサスや素晴らしいステアリングシステムによってアクティブな運転感覚も楽しめる。もちろん高速道路上で渋滞にハマればレベル3に相当する「ディストロニック」でリラックスしたパーシャル自動運転も可能で、現在はまだ法的制約が多いが、メルセデスは2021年にドイツにおける法整備の下に「ドライブパイロット(レベル3)」の導入を計画している。 一方、最新のアシストシステムは一時停止、横断歩道上の歩行者などの検知と自動ブレーキ機能をもっており、街中でも大いに安全を保証する。同時にパッシブセーフティ性能を向上させるプリセーフではEアクティブボディ・コントロール・システムによってサイドクラッシュに際してボディを8cm上昇させて乗員を保護する。また四輪操舵システムは高速域では同位相で高いスタビリティを約束すると同時に、60km/h以下では、逆位相に10度も切れるので、装備されていないモデルと比べると最小回転直径を2mも短縮、全長5mオーバーのSクラスでも街中や駐車場での取り回しが非常に楽になる。 最後になったがメルセデスはこのSクラスで環境に優しい車作りへの配慮も行っており、98kgがリサイクル材料、120個のパーツがリサイクル品、そして40kgが再生可能な植物などの原材料から構成されている。 考えうる最新自動車技術を満載し、精緻な仕上げの高品質なインテリアでパッセンジャーを迎える新型Sクラスは、今度もまたベストカー・イン・ザ・ワールドとしてユーザーはもちろんのこと各自動車メーカーにとっても道標となる北極星(ポーラースター)のような存在になるに違いない。 ドイツではすでに受注が始まっており、発売に際して用意される車種は3L直6エンジンを搭載した「S450/4マチック(367PS)」と「S500/ 4マチック(435PS)」、3L直6ディーゼルを搭載した「 S350d(286PS)」と「S350d/4マチック(286PS)」 、「S400d/4マチック(330PS))の5機種となる。価格はS350dのベーシックモデルが9万3438ユーロ(約1140万円)で、デリバリーは12月からと発表されている。 日本に導入が予定されているモデルは今回試乗した「S500 4マチック」と「S400d 4マチック」が2021年の前半、V8を搭載する「S580 4マチック」は秋になる。さらにその後はPHEVの「580e 4マチック」と「63e 4マチック」が計画されている。価格はまだ公表されていない。 ※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。 スペック例【 S500 4マチック 】 |
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