VWのI.D.バズやイセッタにも似ている最近の新車発表会はほとんどがリモートで行われている。それゆえにパソコンのスクリーンに現れるクルマや人物が、果たして仮想(バーチャル)なのか現実(リアル)なのかあいまいに感じてしまうことがある。しかし、よく考えてみると未来のコンセプトモデルなどは、バーチャルの方がデザイナーにとって紹介しやすいのではないかと思う。 今回、MINIはオリジナル「Mini」のスピリット(最大の空間利用)を発展させた近未来コンセプト「アーバナウト(アーバノート)」を発表したが、このモデルなどはまさにその典型である。 「アーバン(市街)とアバウト(近距離移動)」を組み合わせたワンボックスカーの具体的な生産化については何も述べられていないが、クレバー・ユース・オブ・スペース、すなわちオリジナル「Mini」が1959年に誕生して以来のキーワードに従って、世界のほとんどのカーメーカーが追従したツーボックスのシルエットからさらに進化させ、背の高いワンボックス、ロングホイルベース、ショートオーバーハングのフォルムをもっている。 ミニのチーフデザイナー、オリバー・ハイルマーが率いるチームがつくり上げたワンボックスエクステリアは、アルミグリルの背後にある円形ヘッドライトや六角形グリルなどで確かにミニを彷彿させる。それに、大きく上方に跳ね上がるフロントウインドウは1955年に登場した「BMW イセッタ」の前方ドアを思い起こさせる。 全体のフォルムは2017年に登場したVWの電気バス「VW I.D.BUZZ(バズ)」に似ている。 実は、BMWがミニを含むローバーグループを傘下に収めて間もない1997年に、ローバー側が主導して制作されたMPVコンセプト「ミニ スピリチュアル コンセプト」を発表した経緯もあり、ビートルを発祥とするVWと、両者はどこか通じるところがあるのだ。 ミニは量産バージョンで5シーターと商用バンを検討中かミニ内部の情報筋によればこのアーバナウトの量産バージョンは5シーターと商用バンの2機種が考えられているというが、これもVWが前述のBUZZに商用バンの「カーゴ」を考えているのと同じである。 すでに承知の事実だが、ミニの親会社であるBMWは商用車を持たず、この領域はVWやメルセデス・ベンツに占拠されており、こうした可能性を考えていた親会社にとって全く新しいポテンシャルをもった市場への進出は決して悪くないアイデアである。 乗用、商用のアーバナウトは、これからまだまだ発展の可能性があるアジア諸国のマーケットに向けての最適なオファーになるポテンシャルを秘めているのだ。 バーチャルデザインであるにも関わらず数字は細かく、全長は4460mmと2世代目にあたる現行「ミニ カントリーマン」(日本ではクロスオーバー)よりも261mm長く、将来ライバルとなるかも知れない2022年発売予定の「VW BUZZ」よりもホイルベースは480mm短い。 「1959年に登場した最初のミニは横置きエンジンという画期的なレイアウトをもった革命的な車でした」と前述のハイルマーは言う。そして「我々はこの伝統に基づき、このミニ アーバナウトでインテリアスペースの拡大と最大限の利用方法を追求して、将来のミニのステップとするべく考えているところです」と締め括った。 一方、親会社のBMWはこのアーバナウトのプラットフォームの詳細を明らかにしていないが、伝え聞く可能性としては中国のパートナーである長城汽車との合弁会社「スポットライトオートモーティブ(光束汽車)」で開発が進んでいる市販モデルに採用される電動車プラットフォームが有力である。 この電動車プラットフォームは先日発売された「ミニ クーパーSE(ミニ初の量産BEV)」の発展型で、まずは前出のポットライトオートモーティブで現行モデルが生産&世界各国に向けて出荷され、実績を得たうえで開発がスタートする。 すでにスマートがそうであるように、ドイツメーカーの小型BEVの中国依存度はますます大きくなるであろうことを予感するコンセプトモデルである。 ※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。 |
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