現行マツダ3も欧米で内外装デザインが評価されるセダン、あるいはハッチバック乗用車はSUVの増殖によって難しい時代に入っている。フォルクスワーゲンでさえ、「ゴルフ」と同じMQBを使って作られたSUV「T-Roc」の発売を2年遅らせ、モデル末期を迎えつつあったゴルフの販売への影響を避けようとしたほどであった。 確かに、ヨーロッパやアメリカではベーシックな4ドアハッチバックやセダンの市場は若干シュリンクしつつあるが、北米ではエントリーカーとして役割はまだ果たしている。さらに欧州最大の市場であるドイツの2018年を見ると、コンパクトカーは23.3%と未だ4分の1を占めている。 とりわけこの土俵にはフォルクスワーゲン ゴルフという怪物が君臨しており、この牙城を崩すことはなかなか難しい。ところが「オペル アストラ」「フォード フォーカス」「ヒュンダイ i30」などと並んで「マツダ3」がここ数年で徐々に「ジャパン ゴルフ」として台頭してきている。 それは特に、内外装デザインや使用素材と仕上げ品質の面で、各専門メディアから高い評価を受けているからである。こうした背景を考えながら新しいマツダ3をテストするためにハリウッドへ飛んだ。 新型マツダ3との初対面は昨年のLAショー会場で、深い紅色に包まれた魂動デザインのハッチバックはとても印象的だった。自然光の下で改めて見ると、緊張感のあるサーフェースが彫刻のような美しさを漂わせている。本来、自動車のエクステリアデザインはアウディのように深くシャープなプレスライン(キャラクターライン)がある方が高く評価される。プレス工程を考えれば技術的に難しく、コストもかかるからだ。 しかしマツダ3は敢えてその方向とは別の道を選んだのだ。そして、これが大事なことだが、それを「魂動デザイン」としてデザイナーによって語らせたのである。人間が創造するデザインはその「思い」を説明しないと他人に伝わらない。多くの著名かつ有能なデザイナーが在籍し、育ったマツダにはその伝統がある。 ゴルフを上回るインテリア、素晴らしいシート新型のインテリアはダッシュボードやコンソールなど広い領域で表面加工を施した高品質プラスチックを使用。例えばドアの内張上部はマツダがソフトな素材を使っているのに対してゴルフはハードプラスチックで済ませている。VWのこうした傾向はBMW時代に「コストキラー」で名を馳せたヘルベルト・ディースが社長に就任してから始まったとされる。昨年アウト・モーター・ウント・シュポルト誌が「ミニ」とT-Rocを比較テストした際にも、「クオリティの項目」でミニに及ばなかった。ひょっとするとマツダ3にとって今秋に登場する「ゴルフ VIII」はチャンスかもしれない。 残念なことに正面のメーター類はまだアナログで、タッチスクリーンはもちろん音声入力なども備わらず、ダッシュボード上の8.8インチモニターに表示されるマルチメディアのコントロールはコマンドダイヤルで行う。救いは画質が鮮明なことと、操作系の仕上がりが素晴らしく、操作感触が心地よい点である。 走り出して数分で分かったのは、マツダが人間工学から人体構造までに及ぶ解析を行ったシートの仕立てと形状が素晴らしいことだ。芯の形状がしっかりしており、表面が優しく体を包むと同時に、シャシーと一体になってドライバーに正しい姿勢を取らせる。その成果は、66マイルに渡ってワイディングロードが続くハリウッド郊外のアンヘレス・クレスト・ハイウェイ(英語読みではアンジェレス・クレスト)で鮮明になった。ここは現地のメーカーや自動車メディアが公道テストに使っている。 次世代インターフェースとエンジンパワーが弱点試乗したのは122psと213Nmを発生する4気筒2.0Lと6速MTを搭載した欧州仕様のハッチバックである。24Vのベルト駆動のスタータージェネレーターが装備され、マイルドハイブリッドの機能を果たす。アイドルストップからのスムースな再スタート、滑らかなシフトチェンジの他、エンジンのトルクもサポートする。 はっきり言って残念なのは、アンダーパワーな点で、アップダウンに富んだこのワインディングロードでは、スポーティカーに太刀打ちするためには頻繁なシフトダウンが必要になってくる。しかし、全域に渡って均一で軽い操舵力と、路面からのインフォメーションがしっかりと伝わってくるステアリングのお陰で、コーナではむしろ追い掛ける側に立つこともできた。 短時間の試乗で得た結論だが、デザイン、品質、シャシーの素直さなどで、肯定的な意味で“ジャパン・ゴルフ”、つまりゴルフにもっとも近いところにいる存在であることが確認された。 こうした魅力(デザインや品質、シャシー性能)はアメリカで成功しているトヨタやホンダでの開発ではプライオリティが低いために、「カローラ」や「シビック」が欧州へ持ち込まれるとボコボコにされるわけである。マツダの欧州、特にドイツにおける成功はそこにある。昨年の成績は6万7387台で、日本メーカーとしてはトヨタに次ぐ2位、オーバーオールでも15位に入っている。 マツダ3の弱点はアンダーパワーだ(試乗モデルに関する限り)。「走るとその真価が分かる。それも走れば走るほど、開発エンジニアの思いが伝わってくる」のであれば、もっと走りを楽しませてほしい。そのためにはもう少しパワーで面白さを演出してほしいのだ。 また、マルチメディア/HMIシステムも課題である。今後、次期ゴルフやFF化された次期「BMW 1シリーズ(F40)」など続々と登場するコンパクトセグメントの中で、タッチパッドやボイスコントロールを持たないマツダ3は半歩前進のように見えてしまう可能性がある。 この点は、フェイスリフトで如何にHMI、ユーザーインターフェイスの進化を見せるかに掛かってくると思う。 スペック【 スカイアクティブG 2.0 Mハイブリッド(ハッチバック・欧州仕様) 】 |
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