カナダとメキシコへの関税は日本にも影響が大きいドナルド・トランプ大統領は就任直後からさまざまな政策を進めています。早々にカナダとメキシコに対して25%の関税をかけるという発表をしたことは、経済界に強烈な印象を残しているのではないでしょうか。 メキシコとカナダに対する関税は、トランプ大統領お得意のディール(取引)の材料として使われたようで、現時点では両国に対する関税は延期措置となっています(※本来は2月4日に発動予定)。 それにしても、1994年に発行されたNAFTA(ナフタ|北米自由貿易協定。現在はUSMCA|米国・メキシコ・カナダ協定)の頃から築いてきた安定した関係を否定するような政策には驚かされます。 さらに日本を含めた世界中を相手に相互関税の導入を検討しているほか、自動車については4月2日ごろから新たな関税を発動することもアナウンスされています。どちらもディールの道具という可能性はありますが、日本の自動車業界への影響は無視できません。 まずはカナダやメキシコがアメリカへ輸出する際に25%もの関税がかかった場合の問題から整理してみましょう。 前述したように、アメリカ・メキシコ・カナダの3国は自由貿易の関係にあると認識されていました。そのためアメリカ市場向けのモデルの生産には、アメリカ国内に工場を設置するだけでなく、労働力の安価なメキシコやカナダの工場でも生産するというソリューションは日系やドイツ系メーカーにとって定石といえます。 メキシコとカナダの両方に生産工場を置いている日系メーカーは、トヨタとホンダです。また、日産とマツダはメキシコに工場を有しています。この4社についてはトランプ関税砲が大きなリスクとなります。もちろん、それぞれの国内向け生産もあるので、すべてがアメリカへ輸出されているわけではないものの、影響が大きいことは間違いありません。 |あわせて読みたい| “トランプ後”を考えると工場新設は非現実的各社ともにメキシコやカナダの政府が上手く交渉して関税を避けてくれることや、延期措置が続くことを期待しているでしょうが、そうした不確定要素をもとに経営方針を決めるのはあまりにもリスキーです。 少なくともトランプ政権下はMAGA(メイク・グレート・アメリカ・アゲイン)の精神で、アメリカファーストの政策を続けることでしょう。具体的にいえば、製造業のアメリカ回帰は決定事項と言えます。 一方、そうはいってもアメリカ大統領は二期までしか務められないことになっていますから、トランプ政権があと4年弱で終わることも事実です。 次の政権でガラッと方針が変わることもあり得るとすれば、アメリカ国内に大金を投じて生産工場を新設するというのは良い手とは思えません。求められているのは数年後に完成する工場ではなく、“いまアメリカで作ること”だからです。 まずはアメリカ国内にある工場の生産性を上げることが求められるでしょう。状況としては「いますぐアメリカ国内に工場が欲しい」というニーズが高まることになりますから、アメリカにある工場を手放したいと考えているメーカーにとっては、高値で売り抜けるグッドタイミングともいえます。 各社によって判断すべき状況は異なるでしょうが、中長期の戦略も見据えた上での判断が重要となってきそうです。 |あわせて読みたい| 関税が発動すればトヨタやマツダには影響大の可能性さて、4月2日ごろ発動すると予告されている相互関税や自動車関税の強化が実行された場合、アメリカへの輸出規模の大きな日本メーカーは少なくない影響を受けることになります。たとえば、トヨタは2024年実績で53万8685台を日本からアメリカへ輸出しています。これだけの台数をアメリカ国内での生産に切り替えるのは現実的ではないでしょう。 一方、ホンダが2024年、日本からアメリカへ輸出したのはわずか5379台となっています。この程度の規模であれば関税が経営に与える影響は誤差レベルといえるでしょう。 また、マツダの北米輸出は意外に多い28万297台、日産の北米輸出は1万8902台となっています。 つまり、「トランプ政権による関税砲の影響が日本の自動車業界に与える影響は?」というテーマは主語が大きすぎるといえます。各社、影響の大小があり、対応についても異なるのが現実といえそうです。 (終わり) (写真:アフロ) |あわせて読みたい| |
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