猫も杓子もSUV。ブームの火付け役とは?近年では、街を走るクルマの多くが“SUV”となっています。その勢いはすさまじく、たとえばトヨタの場合、「ヤリス」や「カローラ」といった大衆車だけでなく、「クラウン」や「センチュリー」のような高級車にもSUVがラインナップされるほどです。 >>センチュリーやクラウンのSUVモデルをフォトギャラリーで見る また、そのほかのブランドでも売れ筋モデルの多くはSUVとなっています。逆に言えば、SUVをラインナップに持たないブランドはほとんどありません。 なぜこれほどまでにSUVが増えたのでしょうか? そもそも、SUVという言葉が登場したのは1980年代のアメリカと言われています。SUVは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル(Sport Utility Vehicle)」の頭文字を取ったものであり、日本語では「スポーツ用多目的車」などと訳されます。 ここでいう「スポーツ」とは、必ずしも野球やサッカー、スキーのような競技性のあるものだけではなく、「気晴らし」や「休養」といったのも含む広い意味で使われています。 そのため、広義のSUVは「レジャー全般に適したクルマ」と定義することができます。 |あわせて読みたい| SUVの元祖は「RAV4」日本でSUVが一般的となったのは、1990年代に入ってからのことです。 空前のスキーブームであった当時の日本においては、雪の降る道を楽々と走ることのできる「クロスカントリー・ビークル(クロカン)」の人気が高まっていました。 しかし、トヨタ「ランドクルーザー」や三菱「パジェロ」に代表されるクロカンは、ワイルドなルックスと高い悪路走破性能が魅力であったものの、価格や燃費性能、取り回しや乗り心地といった面でセダンやコンパクトカーのような一般的な乗用車よりも劣っており、日常使いにはやや不向きでした。 そのような中、1994年に登場したトヨタ「RAV4」は、クロカンのようなスタイリングをもった乗用車として、若いユーザーを中心に高い人気を獲得することに成功しました。 >>懐かしの初代RAV4やカイエンをフォトギャラリーで見る RAV4のようなモデルは、クロカンと乗用車の特徴を掛け合わせた(=クロスオーバーさせた)モデルであることから「クロスオーバーSUV」と呼ばれます。 現在販売されているSUVのほとんどは、このクロスオーバーSUVであり、RAV4はその元祖と言われています。 このように、SUVが市民権を得るようになった背景には、クロカンのようなワイルドなルックスを持ちながら、乗用車のメリットも得られるという「いいとこどり」の1台だったからと言うことができます。 |あわせて読みたい| 高級SUVの先駆けとなった「ハリアー」また、SUVはセダンやコンパクトカーに比べて、室内高をとりやすいことや、サスペンションのストロークを増やし乗り心地のよいクルマにできるというメリットもあります。 この点に着目したのが、1997年に登場したトヨタ「ハリアー」(海外名(当時):レクサス「RX」)です。 >>懐かしの初代RAV4やカイエンをフォトギャラリーで見る それまで“土っぽい”イメージの強かったSUVに対し、高級志向の都市型SUVというまったく新しいコンセプトを掲げて登場したハリアー(=RX)は、発売当初から日本だけでなく海外でも爆発的なヒットを記録しました。ハリアーの成功はほかのブランドにも大きな影響を与え、その後多くの高級SUVが登場することとなります。 クロカンのようなワイルドなイメージだけでなく、高級志向にも対応できる懐の広さもまた、世界的にSUVが市民権を得たひとつの理由と言えるかもしれません。 |あわせて読みたい| 「カイエン」が切り拓いたハイパフォーマンスSUVの世界ポルシェ「カイエン」もまた、SUVが主流となる上で重要な役割を果たした1台です。 2002年に登場したカイエンのメインターゲットとなったのは、中東をはじめとする新興国です。当時、ドバイなどの都市が急速な経済成長を遂げており、新興国にも欧米の高級車を手に入れることのできる富裕層が増えつつありました。 一方、新興国の多くはインフラ整備が整っておらず、「911」のようなスポーツカーが満足に走れる道はごくわずかでした。 そこで、ポルシェはフォルクスワーゲン協力の元「悪路を250km/hで走れるクルマ」であるカイエンを開発しました。その結果、新興国のユーザーのみならず、日欧米のユーザーからも好意的に受け止められました。 >>懐かしの初代RAV4やカイエンをフォトギャラリーで見る ほぼ時を同じくしてBMWからは「X5」も登場し、この2台がきっかけとなってメルセデス・ベンツやアウディなどのプレミアムブランドからも続々とSUVが登場することとなりました。 そして2016年には、ベントレーがラグジュアリーブランドとしては初めてのSUVである「ベンテイガ」を発表し、それ以降にはランボルギーニ「ウルス」、アストンマーティン「DBX」、ロールス・ロイス「カリナン」、フェラーリ「プロサングエ」などが続いています。 いずれもラグジュアリーブランドの名に恥じない仕上がりとなっていますが、その根底には中東や東南アジア、そして中国といった新興国の経済成長が大きく関係しています。 |あわせて読みたい| SUVは今後ますます主流にこのように、いくつかの異なる理由が絡み合ったことで、現在では街を走るクルマの多くがSUVとなりました。 ひとつ言えるのは、SUVは一過性の「ブーム」ではなく、中長期的な「トレンド」となっているということです。かつて「クルマの基本形」と言えばセダンでしたが、いまやSUVこそクルマの基本形と言っても過言ではありません。 こうした流れは今後も続くことが確実です。そのため、これからはますますSUVを軸としたクルマ選びが求められることとなりそうです。 >>ベントレーのSUVモデルをフォトギャラリーで見る (終わり) (写真:トヨタ、フェラーリ、ランボルギーニ、アストンマーチン、ベントレー、ロールス・ロイス、ポルシェ、三菱) |
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