VW以前のモデル、EB110のオマージュとして登場かつてランボルギーニの社長として10年の間に今日の成功を成し遂げたステファン・ヴィンケルマンがブガッティ社の社長になって1年8ヶ月が経過した。 ヴィンケルマンの新たな目標はこのブランドに宿るエクスクルーシブなイメージをさらなるレベルにまで引き上げると同時に、パワーに頼りがちだった技術を軽量化や空力特性の改善へと向かわせる事だ。 その最初の成果が世界でわずか1台、そして最も高価なブガッティ「ヴォワチュール ノアール(黒い車)」であった。21億円という価格にも関わらずサッカー選手のロナウドが購入。セレブの登場でブガッティのエクスクルーシブな知名度を一層引き上げることに成功したのである。 彼が放った第2のモデルが8月16日にペブルビーチで公開された。幸運なことに事前取材が許されたイタリア、そしてペブルビーチで行われた社長との独占インタビューから、この最新のブガッティ「チェントディエチ」の詳細をお伝えしよう。 チェントディエチはイタリア語で110を意味するが、これは1990年にエットーレ・ブガッティの生誕110年を記念して「ブガッティ社」を起業したイタリア人ロマーノ・アルティオーリの手によって完成された「EB110」から引用されたものである。 ヴィンケルマン社長はVWが2000年にブガッティ・オートモビルズ S.A.Sを設立する以前に存在した「ブガッティ社」によるEB110も、エットーレ・ブガッティの流れを汲む正当な後継モデルとして認め、このモデルに敬意を表して現代に甦らせたのである。 確かに1987年の創立からわずか8年という短期間で倒産させてしまったアルティオーリの経営者としての資質は問われるべきだが、歴史的に貴重なブランドを甦らせたというエンスージアスティックな気質は讃えるべきだろう。 EB110の要素をいかに反映させるか?ここにドイツ出身だが、イタリアでの長い経験を持ったヴィンケルマンの懐の深さがある。私が「ブガッティはフランス人、EB110を企画したアルティオーリはイタリア人でした。ドイツ国籍のヴィンケルマン氏はどちらですか?」とちょっと意地の悪い質問をすると「私はEU(欧州)人です。」とスマートな答えが返ってきた。つまり、社長はコスモポリタンで、ブガッティというユニークなブランドは国境を超えた存在価値があると認識しているのである。 過去のモデルの再生と聞くと「ミニ」や「VW ビートル」、あるいは「フィアット 500」に代表されるように、安価なレトロモデルというイメージがある。さらには「ジャガー XKSS」のような1億円もするハイエンドな復刻モデルもある。 しかしブガッティの場合は、単なる復刻ではなくて、最新技術をベースにした復活と言うべき内容を持っている。心臓部であるエンジンは8リッターW16気筒でなければならず(ヴェイロンもシロンもW16気筒)、これを組み込むのは容易ではなかった。EB110を最初に手掛けたマルチェロ・ガンディーニのデザインは当時としては斬新であったが、ブガッティのチーフデザイナー、アヒム・アンシャイトによれば今日では二次元的(平面的)だったのである。 それでも蹄鉄グリルはオリジナル(EB110)のような後付け感のある小さなものではなく、デザインアイコンとして適正なサイズで復元されている。また左右のリアクオーターパネルには丸型の冷却口が5ずつ設けられているが、これもEB110から引き継がれたデザインアイコンだ。 ※ページトップの画像で、右奥のシルバーにペイントされたクルマがオリジナルの「EB110」。 0-100km/h=2.4秒、約10億円で限定10台毎度驚くほどのダイナミック性能だが、このチェントディエチも期待にたがわぬハイパー振りで、1176kW(1600hp)のパワーを発生する8リッターW16気筒エンジンによる0-100km/h加速は2.4秒、200km/hまでが6.1秒、300km/hには13.1秒で到達する。また最高速度は380km/hでリミッターが作動する設計になっている。 今回、ペブルビーチで公開されたモデルは真っ白のボディだが、これは冒頭に述べたブガッティ「ヴォワチュール ノワール(黒い車)」とのコントラストとして選択されたカラーで、顧客はもちろん好みのボディ色を自由に注文することが可能だ。 価格は先のブラックカー(ヴォワチュール ノワール)で欧州内では税抜きで800万ユーロ(約9億4500万円)と発表されており、2021年までの2年間に10台が限定生産される予定である。 ところで、ブガッティの創立当初、VWグループを指揮するフェルディナンド・ピエヒはブガッティの開発はVWにとってF1参戦と同じ意味を持っていると語っていたが、現在でもその精神は生きているのだろうか? ヴィンケルマンはこう説明する。「ブガッティに採用される技術は、すべて最先端のものです。特に軽量化に貢献しているカーボンやチタンなどの材料は高価で、一般的なモデルでは簡単に量産化はできません。台数は限られますが、たくさんのノウハウを得ることができます。また、通常では不可能な速度域でのエアロダイナミクスを検証することも可能で、直接ではありませんが、その成果を利用することも可能です」。 4ドアモデルでは電動化も検討中?ところで、ブガッティといえども環境問題は避けて通れない。二酸化炭素排出量規制を免れるためには電動化は必要だと思うが、その点に関してはどう考えているのだろうか? 社長の考えは 「将来的にブガッティは2つの方向へ向かうことが考えられます。1つ目は非常に限られた台数でコレクターズアイテムを最初から考慮したもの、2つ目は日常に使えるブガッティです。前者はスーパースポーツとしてクラシックなパワートレーンを継承するでしょう。しかし後者はそうは行きません。このモデルでは今あなたがおっしゃたような電化が必要になってくるはずです」「噂されている4ドアですか?」「そうお考えになるのが自然でしょうね!」とヴィンケルマン社長は意味深な笑いを浮かべながら、そう答えたのである。 |
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